投票ボイコットなら、後の選挙で立候補禁止へ法改正か 但し検討中

下院選挙が近づくと、これでもかといった話がつぎつぎと取沙汰されるのが、カンボジアである。前の選挙では、野党第1党を解散させての選挙で全議席を独占した政権党(人民党)であり、さらに野党(旧救国党)の流れを汲むキャンドル党は今度の選挙に参加はできず、それでも政権党(人民党)は不安なのか、選挙期間中の世論調査の禁止に続いて、今度は投票棄権者への非難と締め付けを強化するという。

これが、選挙の自由の原則に照らして可能であるかどうかは、未だ解らない。事実上選択肢なんてないからと棄権を呼びかけ野党への対抗策の一つであるようだ。棄権する自由、つまりは自由意志すら認めないとなると、欧米を中心とする諸国から批判は免れない。それを承知で実施するとは思い難い。政権党のリスク管理から言えば、ちょっと綱渡りであろう。

このほど、フンセン首相の指示を受けて、法務省と内務省は、「投票しない人が選挙に立候補できないように選挙法の改正に取り組む」ことを検討している。この修正案は、反政府勢力が人々に選挙に投票しないよう呼びかけるキャンペーンに応じて、火曜日にフン・セン首相がこの構想(憲法改正の一つ)を打ち出した後にその考えを提出したという

法務省報道官:チン・マリン氏は昨6月13日、「法務省と内務省の当局者は昨日会合し、選挙法改正の法案と手順について話し合った」、それは「私たちの目標は、国レベルおよび準国家レベルで指導者の説明責任を高めることです」と述べている。

この法律は「国民の選挙権を剥奪するものではなく、国民には選挙権がまだあるが、一部の政治家が投票することで善良な国民としての義務を果たさない場合には、選挙に立候補する権利を剥奪することになる。」とKhmer Timesなどは報じるが、フン・セン首相の構想及び指示は確か「棄権者に理候補権利はない」という内容のもので、「野党を法律で選ばせない」といった過激な内容までは言ってはいない。これは、明らかに法務省報道官の拡大解釈かKhmer Timesの解釈の迎合拡大解釈であろう。

また同報道官は「世界の他の民主主義諸国における同様の法律と何ら変わらない。なぜなら、投票は国民の義務であり、憲法に違反しないからだ」と述べたというが、「投票棄権はないほうが望ましい」とはあっても、「投票は国民の義務」であるとKhmer Timesが報道官発言を報じるなら、民主主義国家の選挙の原則にはあり得ない。それは「選挙の権利」と言い換えるものである。

報道官は、「憲法は、法律の定めるところにより、選挙権または被選挙権の制限または取り消しを認めています。したがって、この法律の起草は世界の一部の民主主義国家と何ら変わらない」とも述べているが、これは無理筋というものであろう。

フンセン首相の指示は、野党系の選挙ボイコット戦術に対抗してだされたもので、「選挙をボイコットするなら、立候補するのはおかしい」ということを前面に出しての法改正の指示である。

事実、フン・セン首相は13日、いかなる選挙にも投票していない人々の選挙への参加を禁止する選挙法の改正を要求した。だがこれは、国内のメンバーが次の国選挙で投票するのを阻止することを目的とした反対派グループが行ったキャンペーンへの対応であった。首相の指示が巧妙なのは、野党系活動家に向けられたものであるが、例え棄権者が出ても、それがイコール野党系ではないし、また将来、立候補する意思もないという有権者が、実はどこの国でも圧倒的多数なのである。日本がそのいい例である。その点では、首相は巧妙な指示を出している、と言える。選挙前にそこまでするか、例えしたとして、実害もないというのが国民の大多数の受け止めであろう、ということを見越しての首相発言と思える。

掲載写真:Khmer Times

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