読者より質問があった、今年、外国人観光客(ワクチン接種者)は隔離無しにカンボジアに行けるのかという質問であった。言わば、タイ・プーケットのカンボジア版についてである。
旅行業界ならタイのプーケット、サムイ島、続くベトナムはフーコック島の外国人観光客の検討に入っていることが希望の灯りである。が、4月以前も以降もカンボジアではプーケット方式のような、政府レベルの検討は全くない。動きもない。確かにカンボジア政府・観光省大臣が4月、アドバルーン的な発言で観光省では下4半期の後半にワクチン接種者の外国人観光客を受け入れる可能性に触れ、省内で検討を進めるというのがあった。それ以前には、8月にも再開という同大臣の希望的観測による発言があり、6月に入れば同省の報道官がそうした情報の火消に回っている。4月の観光大臣のアドバルーン発言以降、そうした提言を受け入れるような状況ではない。
そこにカンボジア情報を知らせる日本語メディアに突如、?の記事が出た。6月30日付「カンボジア年内に外国人旅行者受け入れか」というものである。実に状況から浮き上がった、誤報に近い。カンボジアの情報を見ている限り、観光業は厳しい状況に追い込まれ、昨年4月頃から外国人を含めた旅行業に従事していた人々がシェムリアップからプノンペンに来て就活に追われていた。さらに今年4月10日以降、首都プノンペンの状況が悪化し、半ばには5週間続くロックダウンの実施である。
4月に「まあ、何とも間の悪い観光省大臣の発言か」と思った人も多いのではなかったか。そして6月29日に保健省は「カンボジアはレッドラインに達している」と提言し、7月1日には、フンセン首相は緊急アポールで全国民に変異種の流入に警戒を呼び掛け、「(コロナ禍は)長い闘いになる」と語たり、タイとベトナム国境を閉じた。そして11月末に完了に向けてワクチン接種に努めているが、今年中の外国人観光客受け入れは困難である。外国人の観光業界が希望的観測を述べようと、タイ、ベトナムとは状況も地理的環境も違う。
・タイもベトナムも隔離無し観光客受け入れは「島内」である。カンボジアには飛行場のある島がない。
・日本の外務省は、タイ、カンボジアに渡航自粛を呼び掛けている。
観光省の認識 国内観光約7割減、外国人観光9割以上の減
そして観光大臣Thong Khon氏は6月30日、今年上半期の国内観光客の数を報告した。そして7月2日に現地紙Phnom Penh Postは「アンコール遺跡群チケット収入は上半期99%減」という記事を掲載した。
*遺跡群チケットは外国人のみ購入。地元カンボジア人は無料である。
観光省同大臣は、6月30日に開催された観光安全対策の実施、オンライントレーニング、および新しい観光経済手段の開発に関するビデオ会議で次のような報告した。今年の上半期には、200万人以上の国内観光客がいたが、これは昨年同時期の国内観光客数より62.45パーセントの減少。4月の州間移動禁止後、観光客数が急減したという。
5月22日にプノンペンのロックダウンが解除されたが、それ以前に州間旅行禁止の緩和措置によって再び国内旅行は増加した。その結果、どうなったか。辺境のラタナキリ州でさえ数十人にコロナ感染者が相次いだ。カンボジア人は言う、「プノンペンからの旅行者が全国にコロナを拡げた」と。
幸いプノンペンのワクチン接種が波及している。が、今や地方は感染が蔓延状態である。ワクチン接種が地方に及ぶまでこの状態は続くとみるのが常識である。ワクチン効果は第1回の接種から2か月後に見えてくる。
掲載写真;イメージ Khmer Timesより。