<2月20日市中感染事件> 首相の指示と保健省の対応の食い違い 背景に医療事情(隔離施設医療)の逼迫か

8日朝、フンセン首相は7日の音声メッセージで「プノンペン検疫センターで治療中の新型コロナ感染者を旧グレートデューク・ホテルに移送するよう当局に命じた」ことが報道された。

だが地元メディア:Khmer Timesでは、上記の報道直後に次のような報道が掲載された。

Mam Bun Heng 保健相は本日(8日)、彼の省がプノンペン市庁舎と協力して、「旧グレートデュークホテル Great Duke Hotelを感染者治療センターとして使用している]と述べたが、しかし「軽度のCOVID-19病の患者だけがグレートデュークホテルに送られる」と語った。

これは、フンセン首相に指示に従うが、あくまで「軽症者用の治療センターとして使用する」と述べているかに読める。ならば、保健省はフンセン首相の指示を薄めた内容で対応している、と読む者は受け取るであろう。

Only mild COVID-19 Patients will be sent to the Great Duke hotel, says Health Minister

8日のkhmer Times 報道、7日から記事内容が2転

だが8日朝の報道では、この保健省に対応について地元メディア:Khmer Timesの記事は2転した内容となる。題名に「正しい動き:フンセン首相は検疫センターからの新型コロナ患者の移送を命じる」という記事を掲載した。

同首相は音声メッセージで7日に指示したにも関わらず、保健省による措置が講じられていない、改めて批判し、指示通りにするように命じたようだ。報道によれば、「首相は昨年初めにグレートデュークホテルの使用を命じましたが、保健省による措置が講じられずに閉鎖されたままであった。」と指摘されている

首相は、検疫センターが病院併設に改築されていたこと知らなかった

だが現在、Prek Pnov地区の検疫センターに入院している約190人の患者が、先週、適切な許可なしに病院に転院したが(首相は知らされていなかった)、それで、これらの患者は閉鎖されていたGreatDukeホテルに移すいうのが首相の指示である

どうやら7日の首相音声メッセージが出る前に、500余りのベッドのプノンペン検疫センターが検疫された人を収容するために建設、拡張、改造され、先週、病院に改築されたことを首相が知らなかったようだ。これが首相の音声メッセージの「心配でショックを受けた」の真意であった。言わば、フンセン首相が保健省の怠慢やその後の指示内容を薄めた対応に激怒した、ということのようだ。

そこで同首相は、カンボジア王国軍の副司令官であり、検疫センターの安全と秩序の管理に関する小委員会・委員長:フン・マネ氏に「グレートデュークホテルを治療センターとして設立するよう」命じていた。政府関係者によれば「フンマネ中将への首相の命令により、清掃作業はほぼ即座に開始された。多くの作業が進行中であり、ホテルは明日または火曜日の終わりまでにCOVID-19患者のための病院として再開される準備ができているはずです。」と伝えている。

感染患者:中国人の死に関する悪い噂が首相を動かした

Khmer Timesの報道によれば、フンセン首相周辺から情報によれば、今回の件は徹底的に調査する必要のあり、多くの申し立てがあったため、「なぜ、どのような条件でPrekPnov検疫センターが病院に転換されたか」についての調査も可能であるという。どうも保健省の独断で進め、検疫センターに問題があるのではないか、という懸念を首相や首相周辺は抱いているようだ

今回の件で同首相が懸念したきっかけは、Prek Pnov検疫センター兼「病院」での感染していた中国人の死である。保健省は直ちに「死因は薬物過剰摂取である」と発表したが、その件について様々な悪評を立った。どうも中国人の死はセンター内での薬物使用、死後確認であったようだ。長くプノンペンのPrek Pnov検疫センターについては、センターと居住者の健康に危険を及ぼすタバコ、アルコール飲料、その他の物が容易に手に入るといった否定的な噂が出ていたという。そうしたことも含めて、フンセン首相はプノンペン検疫センターの在り様に懸念を抱き、同首相の7日の声明に至ったとKhmer Timesは伝える。また同メディアは記事の最後に「同検疫センターのプロジェクトの費用は約790,000ドルで、政府の予算によるもの」という言葉を添えて「同検疫センターは、4つの建物と504の部屋があり、公立学校の部屋とホテルを利用してカンボジアに入る外国人とカンボジア人の両方の旅行者を収容する検疫センターとして使用されていた」と検疫センターの役割をダメ押しのように伝えている。

想定以上の感染者急増・拡大、外国人の非協力によって医療・防疫体制の逼迫           

こうした政府内の確執が外に出てくるのはカンボジアでは珍しい。まして政府筋からの情報を一手に引き受けているKmer Times 電子版が2転した記事を掲載するには、首相及び周辺の強い意志が打ち勝った印象がある。一方、あたかも勝手な対応をしているかのような保健省だが、そこには逼迫する医療事情が背景にあるのではないか。検疫センターが新型コロナ感染者の病院を併設に至ったのは、<2月20日市中感染事件>が保健省の当初の想定以上感染者急増、特に外国人(中国人、ベトナム人)の当局への非協力、病院隔離のゆるみ等、結果として医療事情(特に医療従事者不足)の逼迫を招いているのではないか

*掲載写真:プノンペンの検疫センター、ここに病院を設けたことがフンセン首相の怒りを招いた、とKhmer Times は伝える。

 

おすすめの記事