被害者の旧運転手が事件の首謀者
3月1日、カンボジアの住民を驚かせた軍警察による「強盗4人の射殺」、詳細が明らかになってきた。2日午前の時点はあざやか過ぎる軍警察の事件解決に詳細がつかめず不審もあった。また、報道で誘拐の文字が躍っても、誘拐の詳細報道はなかった。
「銃器強盗4人が富裕層邸宅に侵入、警察と銃撃戦となって犯人全員(4人)が射殺される 家人は無事」
地元メディアが大きく取り上げ、軍警察の公式facebookに何度も取り上げられた「プノンペン都センソック地区クム区ボレイアンコール・プノンペン分譲の邸宅の4人組誘拐・強盗事件」は、2日の夜から3日にかけてKhmer Times及びPhnom Penh Post の報道を読み解くに次のような事件となる。
事前の警察にタレコミがあって警察特所部隊が待ち伏せ、銃撃戦後に全員射殺したというものであった。鮮やか過ぎた警察の手並みは実はこういうことであった。
上記の邸宅のオーナーである被害者の旧運転手の怨恨と誘拐・お金目当ての強盗計画が事件の発端である。
被害者(主人)に新運転手が誘拐・強盗計画を告げる
事件の首謀者と警察が特定したオエム・ソバンナリッツ Oem Sovannarith(21歳)2019年に被害者オーナーの運転手であり、辞職後の2020年に再雇用を同被害者に求めたが既に「新運転手を雇用した」と断られ、それに怨みを抱き他の4人を誘い被害者家族の誘拐・金銭強奪を計画した。Phnom Penh Post では、「どういう訳か新運転手が同被害者に誘拐・金銭強奪の計画を告げた」とあるが、どうやら新運転手も強盗仲間に誘われていたのだろう。また、Khmer Timesの警察情報によれば新運転手が「裕福なビジネスマン(被害者)から100万ドルのを奪う、(そのため)娘を人質にとどめ、お金が銀行に預けられて支払われるまで、5人の男性による大胆な計画がある」と被害者に告げたという。
軍警察、密かに誘拐・強盗犯を待ち伏せ
同被害者は事件の数日前に警察に通報した。通報を受けた軍警察は誘拐計画を阻止する準備を進め1日の朝、誘拐・強盗犯が来るのを待ち伏せした。手配が終わった段階で誘拐・強盗5人(告発者を含む)が被害者の邸宅に侵入し、告発者が巧みに邸宅内に4人の犯人を入れた後、彼は外に避難したようである。その後、待ち伏せ包囲の軍警察特殊部隊と誘拐・強盗犯4人と銃撃戦となり、4人の犯人は射殺された。その時点で被害者とその家族、2人の家政婦さんは別の場に事前に避難していた。
この事件、大胆な計画と銃器の準備で始まったが、結末は「誘拐・強盗犯がまんまと警察の罠にはまった」という事件であった。自業自得と言えばそれまでだが、何か哀れな事件である。
カンボジア・ニュース:Khmer Times とPhnom Penh Post の読み比べが必須
Khmer Timesの報道は警察発表をなぞっているが、Phnom Penh Postの場合、警察発表をなぞりながらも独自取材をしている形跡がある。以下はKhmer Timesからの事件報道の一部要約である。
《被害者から通報を受けた軍警察は、憲兵隊長のSao Sokha将軍の指揮下で、プノンペン市軍警察の司令官であるRathSreang中尉が率いる計画を作成したと述べた。プノンペン市裁判所の副検察官。最初に、彼らは、憲兵隊が被害者を家から連れ出し、首都の安全な場所にとどまり、軍隊が犠牲者の家と財産の中に隠れている間、1つのチームが容疑者を取り締まり逮捕することを計画したという。
犯人4人を射殺後、軍警察は1丁のAK-47ライフルと2丁のピストルを押収した。また、犯人たちの身体を検査したところ、オエム・ソバンナリッツ Oem Sovannarithから軍のIDカードを押収されたという。彼の軍のIDによると、彼はプレミアのボディーガードユニットで働く重要な人物であった。しかし、ボディーガード本部の人事・訓練部長であるオウン・セレイクス中尉は「昨日、オエム・サバンナリスがボディーガード本部と協力したことはなく、彼の軍事IDが偽物であることを確認した」という。》
また、Phnom Penh Post には下記に記述がある。
《ボディガードコマンドの司令官であるUng Serey Kutは、オエム・ソバンナリッツ Oem Sovannarithが以前はメジャーのランクを保持しているボディガード部隊のメンバーであったという噂を否定する手紙を出した。手紙には、ソバンナリッツが使用していたボディーガードコマンドの記章カードは偽造であると書かれていました。》
警察発表では、事件は1日午前11時、押収武器は3丁、死者は犯人4人、となっている。
事件の詳細が出て、射殺された犯人4人が特定されながらも、依然釈然としない印象が残る事件であった。