カンボジア=米国貿易 年始から10か月で60億ドル、前年比40%増

カンボジアの地元紙では実に珍しい写真が登場した。カンボジアと米国の交差する旗、久方の登場である。だが、昨日は下段の写真があった。Khmer Timesらしい年末の軽業ご披露である。

カンボジアと米国の間の二国間貿易は、2021年の最初の10か月で約63.5億ドルと評価され、前年比で40%増加しました。これだけを言うと、カンボジアにとっては米国様々であるが、あくまで前年比の非核である。それでもカンボジアにとっては中国と並ぶ貿易相手国、とくに裁縫工場の輸出品の多くが米国向けである。

カンボジア商工省の数値によると、2021年1月から10月にかけて、カンボジアは60億8000万ドル相当の商品を米国に輸出し、昨年の同時期と比較して40%増加しました。同時に、米国からのカンボジアの輸入額は2億7800万ドルで、前年比で42%増加したという。

米国輸出の主力を占める製品製造のカンボジアの裁縫工場や靴工場は。実は経営は近隣の華僑や中国本土から活路を求めてきたものである。その理由は、カンボジアの安価な労働力と米国やEUの特恵関税制度である。中国企業は特に後者をしっかり利用している。

中国の台頭は、新帝国主義の時代を招いた

だが、そうした貧しい途上国との連携強調を謳い文句にする中国だが。やっていることはかつて大声で批判した「新植民地主義」とさほど変わらない。現に中国企業は旨味を巧く吸い上げているのが、カンボジア軽工業部門である。

だが、これからはそうした旨味の通用しなくなる。かつてカンボジアからさらに低賃金を求めてアフリカ諸国に裁縫工業を移した中国企業は多かったが、そこは言わずと知れた開発独裁国、政官癒着と中国の汚職攻勢ではカンボジア以上である(だがこれを笑えないのは、1970年代の日本企業の東南アジア進出とて似たような手を使ったし、それを汚いと批判した欧米企業とて、かつての植民地支配がなければアフリカが今も続く呻吟するようなことはなかったと、歴史を思い返せば解る)。返ってアフリカの住民から反発生み、さらにソロモン諸島(中心はあのガダルカナル島)で中国焦点焼き討ち暴動が起こった。

1990年代の冷戦終了後にやってきたのは、米国主導の世界秩序に対するイスラムの反撃中国の台頭、後者は新たな帝国主義の時代で始まりである。

常識的に帝国主義は19世紀に国内では独占企業の覇権の確立、政治的には少数派の強権抑圧、排外主義扇動、一方で国外では領土拡大だが、21世紀の中国はすべてこうした「帝国主義論」の要素が当てはまる。第2次世界大戦が「持てる国」と「持てない国」の争いと歴史で教わったが、温故知新で歴史から現在を見れば、よく解る。テロの定義なんてその国の自分勝手な妄想も入っているーウイグル族をテロ集団と中国がみるようにー。特にカンボジア、ニクソンの秘密爆撃といって1970年代初めにカンボジアは沖縄を飛び立ってB52 に絨毯爆撃で無差別にカンボジア農民の50万人以上が死んでいる。アンコール遺跡のベンメリアやサンボプレイクック遺跡では遺跡の楼門を破壊し、今日まで爆撃跡のいくつも残っている。ホーチミンルートなんていうベトナム国境地域だけなんて勝手な米国宣伝の思い込みで実に内陸深く爆撃していた。こりゃ大量「テロ」というものでニクソン政権が秘密裏に行っていたものである。そして今のミャンマー、国民の多くは軍部をテロ集団と呼んでいる。

そしてコロナ禍と共に大きくなった米中対立、当然カンボジアと米国に影を落とす。バイデン米政権は11月8日、カンボジア政府による人権侵害や汚職を理由に同国への輸出規制を厳しくすると発表した。それ以上に中国軍の影響拡大も問題視した。そこで軍事転用の可能性があるハイテク製品の輸出を規制することになった。米国市民の庭での普段着か家のなかの寝巻のような安価な服の輸出であるから、今のところはカンボジアに影響は少ない

カンボジアの中華系裁縫、靴工場が怖れていること

米国商務省はカンボジアを武器禁輸国に分類し、ハイテク製品の輸出審査を厳しくする。軍事用途や軍事関係者への輸出は事実上認めない。同商務省は中国の人権侵害を理由に中国企業に禁輸措置を科すなど、経済制裁を活用して圧力を強めているが、カンボジアへは米国は武器輸出していないからカンボジアへの影響は全くない象徴的のものである。なのに早速フンセン首相は過敏に反応し「軍の保管庫に米国製武器を集めてまとめよ」と米国への反発をパフォーマンスした。きっと軍も困ったことだろう。これも思えば、中国向けのパフィーマンス演説である。

打撃は中国系企業に、華僑は巧く立ち回る

実は一番、米国の動きに戦々恐々としているのは、華僑や中国系のカンボジア工場経営者たちである。特恵関税という甘い汁を利用できなくなるのはないか、と。だが華僑は伝統的に目ざとく中国本土とは商売以外に距離を置く者たちが多い。新疆綿に代表される米国の輸出規制に、「中国系企業」は米国から制裁対象になることを非常に怖れているの現実である。

今年の1年、カンボジアは米中の狭間でバランス外交に腐心

こうしたことは、カンボジア経済の自立にとっては或る意味でチャンスなのである。だから、表向きの口汚い演説の裏で実はカンボジア、米中の狭間でバランス外交に腐心しているのが、この1年である。

12月28日付けのKhmer Timesの掲載画像 「ASEANの持続的な成長は中国との協力が不可欠でまたチャンス」見出しの記事に掲載された。ベトナムでは見られない写真である。

ASEANは元をたどれば、かつて米国主導で60年代の東南アジア反共政権諸国の集まりで崩壊した南ベトナム政権を支えていた。それが、Khmer Timesにこのような写真が掲載されるのも時代の流れである。こうした旗の写真デザインはKhmer Timesらしい政権への忖度そのものである

皆さま、よいお年を!

さて、今年も今日で終わります。カンボジア=米国貿易から今年の1年を見り返ってみました。皆さんよいお年を!明日は、新年の元旦です。元旦にニュースなんて野暮なことはいたしません。

STAE ☆CAMBODIA 編集子

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