首相、正月の水かけ等の禁止を要請 外国人負傷 過去に禁止令は出ていた

フン・セン首相は4月20日、先週シェムリアップ州で行われたクメール正月のお祭りで、外国人女性の目を水しぶきで傷つけた後、水鉄砲の禁止を求めた。

フン・セン氏は次のように述べています。「このゲームをプレイしないでください」、「それらは数年前まで行われていなかった。」と述べている。

カンボジア人は今年のクメール正月を 4 月 13 日から 16 日まで祝い、国中の祝祭には外国人を含む行楽客600 万人以上が参加しましたとKhmer Timesは伝える。

プノンペン王立大学の歴史教授であるサンボ マナラ氏は同日に、「水鉄砲で遊ぶことはクメールの伝統ではなく、この慣行が続けば伝統文化とクメールの知恵に影響を与えるだろう」と、早速に首相の禁止要請に同調した。

「何人かの若者が女性に水鉄砲で嫌がらせをしましたが、彼らの行動はすべてのカンボジア人に恥をもたらしました。人々は楽しむのが好きですが、こうした嫌がらせが好きな人はいません」と。

また同氏は、「クメール正月のウォーターゲームは以前とは違うと言いました。先代も水遊びをしていましたが、元旦の仏塔での僧侶の儀式の後、お互いに水を掛け合って祝福していました」、「若者が伝統的なゲームを始めなければ、それは私たちの文化から消えてしまうでしょう。悲しいことに、カンボジアの若者は伝統的なゲームへの関心を失いつつあります。」とも付け加えている。

同氏の主張は、明らかに首相の禁止要請に同調したものだが、今年のクメール正月に到る水かけの横行については、明らかな認識の誤りもある

① クメール正月での水かけはカンボジア伝統のものではない。これは正しい。だが伝統にない新たな祭り騒ぎは多々ある

隣国タイの水かけ祭りの模倣である。だが、それを言うならば、カンボジアのクリスマスやバレンタインデー、国際新年のカウントダウンも伝統にはない外国の模倣の馬鹿騒ぎである。事実、2000年代にはクリスマスもバレンタインデーも極一部のお金持ち家族のものだった。

2000年代、新年のカウントダウンなんていうものは、金持ちの道楽息子や娘が騒ぎ、午前零時に銃をぶっ放すものだったから、一般市民は日本の大晦日に当たる12月31日には夜、外出を控えたものである。

だから伝統を持ち出しても説得力がない。要するにカンボジア人の一般の性向としてある種の規制がなければ、調子づいてしまうことにある。普段の信号のある交差点での多くの身勝手な信号無視がその最たる現象である。逆走とて遵法意識の低さからくる身勝手な行動である。

今度の首相によるクメール正月の水かけまつりの禁止も、その実は禁止の再確認の要請である。

喉元過ぎれば、というよりは取り締まらなければ、盗み見で調子づく身勝手な人たちの遵法意識の低さに原因がある。例えば、「プノンペンでは公道を占拠し冠婚葬祭を行うことが禁止されている」にも関わらず、時折、迷惑な大音響で行われ、渋滞を引き起こしているのは、私権の無制限の拡張である。こうしたことは地区警察の収入源になるから、お目こぼしであることは明か。毎夜の野外レストランの大音響も経営者の金儲け優先と地区警察のお目こぼし(収入源)になるからで、大規模な抗議が起こらなければ、無理強いの我慢を周囲は強いられている。

② クメール正月での水かけは、既に10年ほど前、フンセン首相の指示で禁止が出されていたはずである。

2000年代の半ばには、クメール正月にプノンペンのリバーサイドやワットプノン周辺に若年層が集まり騒ぐ、そのうちに通行人に水をかける、やがて水鉄砲を持ち出すことが自然発生的に始まり、地方都市にも拡がった。そして水かけに乗じて、硫酸かけ事件が起こったり、また水かけに乗じた痴漢行為が続発し、目に余るものになった禁止された。

王立大学の歴史教授は、こうしたごく身近な歴史すら触れていない忖度発言であるか、Khmer Timesの編集切取り記事である。水かけが問題となり、パウダーが取って代わったに過ぎない。それすらも禁止という通達が出ていた

要は、水かけであれ、パウダーであれ、それに伴って痴漢行為の続発や泥棒、スリ被害の続発である。大騒ぎしている群衆のなかで女性の悲鳴や泣き顔は痴漢行為の酷さにあった被害者である。多くの人々が目撃しているが、誰も見て見ぬふりをしているからますます酷くなる。伝統という以前に公衆道徳の意識と警備対策であろう。下の掲載記事を読めば、スり泥棒の被害がクメール正月のワットプノン周辺でどれほどのものか、が解るであろう。

また、こうしたフン・セン首相の要請を報じるKhmer Timesも、記事に登場する歴史学者も数日前に掲載された「過去最大の クメール正月フェスティバル」(Khmer Times 4月19日付)と題した記事のトップに下の写真を掲載したことを、どう説明するのであろうか。きっと従来の同様にスルーであろう。

4月16日、ワットプノン付近 4月19日付けKhmer Times

フンセン首相の20日の「水鉄砲の禁止を求めた」は、<10年以上前の禁止の再確認の要請である>に過ぎない。首相自身はそれを踏まえての発言だが、Khmer Timesも歴史学者もそのことに全く触れていない。

今頃、プノンペン都庁の担当者や上の写真の水かけ人物は「やばい」と思っているに違いない。「君子は豹変する」と言う言葉はあるが、メディアは君子じゃない。

掲載写真:Khmer Times

 

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