増える在住外国人の犯罪、ベトナム人が2015年頃からトップに
日本国内の犯罪ニュースでカンボジア人が登場するのは、近年では3度目のニュースになる。
最初は、埼玉県熊谷市の殺人事件、2度目は東京・赤坂での邸宅に押し入って金庫を強奪して逃走車に置いてきぼりになったカンボジア人実行犯、今回は直接の犯罪を起こしたわけではないが、企業と組織ぐるみの違法滞在のカンボジア人である。
既に日本国内の在住外国人では、2015年頃からベトナム人が中国人を犯罪者数で上回り、第1位に躍り出ており、その後もその地位を確保している。
1990年代の在住外国人の犯罪と言えば中国人であった。偽装結婚や旅行ツアーからの大量脱走での不法滞在、また脱走せずともツアー客に宿を貸すと部屋のテレビがなくなるなどのことが、話題になっていた。その後、中国マフィアが組織的に送り出していた中国人の犯罪が第1位の犯罪数となった。また、2000年代には毎年の如く、ベトナムキャリアのベトナム航空の客室乗務員を含む職員が日本の警察による摘発が日本のメディアで取り上げられていた。その多くは密輸、例えばユニクロや電気製品を大量に仕入れ、それをベトナム国内に持ち込んで転売する。そうした密輸品を並べ、堂々と売っていた店がハノイにはあった。国営航空会社がそれだから、技能研修制度が始まるや、ベトナムマフィアによるうな切り捨て強盗として使われてきたようだ。
ベトナム、カンボジア人の不法滞在の摘発、組織ぐるみの疑い
このほど不法滞在などの入管難民法違反容疑で、石川県警は13日、金沢市泉が丘2丁目のマンションに住むベトナムやカンボジア国籍の男女32人を一斉摘発し、うち数人を逮捕した。捜査関係者によれば、マンションの複数の部屋は県内の建設関係法人の寮(部屋に何人も居住するタコ部屋)とみられ、外国人は建設現場に派遣されていたという。県警は、不法滞在が組織ぐるみで行われていた可能性があるとみて調べている。当然、県警は技能実習制度を利用した悪質仲介業者、建設企業(現場は有名所の建設業者の下請け企業)の絡んだ組織ぐるみと見ている。捜査関係者によると、石川県警が入管難民法違反容疑で30人以上を一斉に摘発するのは異例であるという。摘発された32人の多くは、技能実習生などの資格で来日し、在留期間を過ぎても不法に滞在した疑いが持たれている。逮捕された数人以外の身柄は、名古屋出入国在留管理局に引き渡されたという。
関係者によると、外国人が住んでいたマンションの複数の部屋は、建設関係の法人が従業員の寮として借りていたとみられる。県警はこの法人関係者からも事情を聴く。
石川県警 1~5月に7件摘発
石川県警によると、県内では今年1~5月、入管難民法違反の疑いで7件(前年同期比6件増)を摘発した。3月には長期の在留資格を得るために偽装結婚をしたとして、白山署などが電磁的公正証書原本不実記録・同供用や入管難民法違反(虚偽申請)などの疑いで、中国人の女2人や白山市の農園経営の男ら計4人を逮捕している。
石川県警に隣接する富山県警は2014年、入管難民法違反(資格外活動)の疑いで、入善町の工場で働いていたベトナムやネパール国籍の労働者計50人を一斉摘発した。
入管法、技能研修制度、派遣型労働仲介会社はセットの問題となっている
このほど入管難民法の改正が大きな話題となっているが、技能研修制度が犯罪者呼び込みの温床となっていることは周知の事実である。また、技能研修制度自体が実態は外国人出稼ぎ労働であり、「技能」とは名ばかりであることもよく知られている。2000年代に日本国内の格差の問題は先ず労働現場から起こった。労働市場の流動化は規制緩和、労働市場の自由化の名のもとに派遣型労働が大企業の製造部門で多数を占め、その劣悪さや過酷な環境が国会で論議されるまでになった。
そのため、製造業や第1次産業では日本の若年労働者は派遣型を嫌い、都会の第3次産業に吸収され、労働現場の穴埋めを外国人労働者に埋めるようになったが、その本質が企業のコスト削減にあるのだから、製造業の派遣型とは当然底辺労働になる。外国人でも機転の利く者は日本の若者同様に逃げ出し始めている。派遣型労働が、地方に見られる工業団地や建設工事現場の実態で、外国人と主婦パートがいなければ成り立たない工場が多数である。地方都市へ行けば、昼間に街を歩いている三々五々の男たちといえば、東南アジア系かブラジル人が目につく。また、派遣型労働を統括する仲介会社は、派遣先企業が払う給与の31%まで天引きすることが法的に認められているのがオイシイ企業となり、新規参入が相次いだ。
入管難民法の改正の問題も、犯罪の温床となる技能研修制度や日本語学校が利権を持つ留学制度、そして国内の若者を苦しめている派遣型労働の問題を含めなければ、根本的な解決にはならないことは明らかで、警察や入管だけが忙しくなる社会となる懸念がある。
掲載写真:NHK 石川