世界銀行が見るカンボジア経済の未来 圧倒的な市場は米国とEU

貿易市場は圧倒的に欧米、輸出品は軽工業と農業に依存

ー以外にも中国市場向けはごくわずかー

世界銀行は1月31日の最新の報告書で、「衣服、履物、米、キャッサバ、観光の5つのセクターが近年カンボジアの総輸出の80%を占めており、EUと米国の2つの市場だけで全体の69%が購入している」と述べた。

これによって、カンボジア経済の足枷が透けてくる

ここで意外に思う方も多いが、カンボジアは中国がインフラ支援や政商を通じて深く結びついている面が強調されているが、冷静に見れば貿易市場の7割が欧米諸国の特恵関税に依存しており、その恩恵は華僑資本が製造業、輸出関連企業を牛耳って利益を吸い上げている。所謂工場や大規模農業(プランテーション)はかつて植民地主義に見られた買弁企業である。また貿易市場の面では、政府関連の報道の割には、中国や日本などへの農産物を通じた市場はごくわずかなものである。中国は経済成長のなかで都市部の食生活の多様化が進み、カンボジアをその食料調達の一部と位置付けている。それが中国の一帯一路の戦略である。そのため、カンボジアの経済成長を妨げる足枷のいくつかと、世界状況の変化に大きく影響されている。つまり、蜜月関係も状況次第である。コロナ禍の直前、カンボジアの非民主主義的な傾斜にEUは特恵関税を廃止する動きに出ていた時、カンボジア政財界は過敏に反応した。

労働生産性の経済成長の足枷ー外資系企業への依存体質と構造的腐敗ー

「例外的なレベルのスキルとトレーニング、および国が労働と資本を総計でどれだけ効率的に使用するかの尺度である「全要素生産性」が低いため、労働生産性は依然として制限されています。さらに、王国の低い貯蓄率と国内投資は、外部の資金源への大きな依存につながっている。」

これが他国への依存、特にカンボジアが中国に傾斜せざるを得ない背景である。また、国際的な支援の枠組みがなければ、カンボジアが復興することはできなかった。そのため政権も国民も他国の支援に依存する体質を温存し、また一方で中国は東南アジアで唯一の中国の橋頭保として確保するという戦略に依存するしかない。

また、カンボジアの国内銀行はまた、多様化の欠如に対処し、より強力に再構築するために、カンボジアに多くの選択肢を推奨しなければならい。外資の銀行は、事があればいつでも資本を引きあげる可能性を有している。

人的資本の充実は構造的な腐敗の抜本的な改革が不可決

「人的資本への投資、改善された市場制度によるより効率的な資源配分の支援、および公共投資管理の改善は、生産性の向上に役立つ可能性があります。同様に、グローバルなバリューチェーンへの貢献を高め、農業に付加価値を生み出し、サービス部門の競争力を高めることで、輸出を多様化することができる。」

だが、人的資本の充実は直接的には教育投資であるが、それ以前に全官庁を覆う構造的な腐敗とそれに付け込む外資系の賄賂である。そのためカンボジア政府は先に教育改革に取り組み、そして治安機関=軍警察の元締めである内務省の改革に2019年から取り組もうとしていたが、2020年からのコロナ禍がそれを阻んだ。

ASEANの動向は1にミャンマーの動向にある

世界銀行はカンボジアの現状からカンボジア経済の未来を描いてみせたが、外資依存体質と汚職構造の改革が迫られている。カンボジアの未来は、新たな冷戦構造の枠組みのなかで中国依存を強めているがASEANはその方向とは一致していない。コロナ禍以降、より明確になるのはミャンマーの孤立化、タイの軍事政権の後退、ベトナム台頭というコロナ以前の経済状況が進展する流れは変わらないであろう。ASEANの未来は1にミャンマーの未来に深く関わっている。ミャンマー国民の抵抗は先ずはタイ、カンボジアに現れることは必然であろう。

*「 」内は世界銀行の報告書からの引用

掲載画像:イメージ 画像:Khmer Timesより

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