掲載写真のボウテナガザルは、2006,7年頃、筆者はシェムリアップの街中の樹木で見かけたことがある。当時までのシェムリアップの街の中級ホテルの屋上から見ると実に樹木の多い街であった。中心部の大通りを入ると屋敷森に囲まれた高床式住居が見られ、多くは椰子の大木がびっしりとあった。朝食時、鳥のさえずりと猿の咆哮を聞くこと稀ではなかった。舗装は大通りだけで路地は未舗装がほとんであった。あの頃のシェムリアップは実に美しく緑あふれるのんびりとした街であった。
先週のWildlife Alliance(世界野生物保護団体)は、アンコール考古学公園(アプサラ機構の管理・保全する世界遺産:アンコール遺跡群エリア)に野生生物を再導入するプロジェクト8年で成功を収めた、と発表した。このプロジェクトは、公園の管理を任務とする州機関であるアプサラ国立公社(ANA)と、林業局および野生生物同盟が主導しているものであす。
Wildlife Allianceのプレスリリースによれば、、ユネスコの世界遺産に登録されているアンコール遺跡群がカンボジアの自然遺産の本拠地であると述べ、バイヨン寺院での霊長類、鹿、山猫の彫刻が示唆するように、野生生物が豊富であった可能性があったという。現在もアンコールトム内は寺院遺跡遺跡、道路以外は森であるが、アンコール王朝時代にはアンコールトムは緑豊かな大きな城塞都市である。しかし、20世紀の密猟と狩猟は野生動物の個体数を減らし、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストにある絶滅危惧種であるボウシテナガザルも急激に減少した。
「このプロジェクトは、アンコールの風景の中に野生生物を再導入することによって、この損失を逆転させることを目的としています」とWildlife Alliance(世界野生物保護団体)は述べています。それはすべて2013年にボウシテナガザルのペアのリリースで始まり、それ以来、絶滅危惧種を含む約40頭の動物が野生に放出されている。アンコールを野生生物にとって理想的な棲家としているのは、食料だけではなく、「アンコール周辺の森林は完璧な生息地であり、迫害された種にとって切望されていた安全な避難所を提供します」との野生生物救助とケアのディレクターであるニックマルクスはプレスリリースで述べている。昨年は、最初の山猫と鳥の種のリリース、次にシロクロコサイチョウのペアは現在、アンコールの森を飛んでおり、サイチョウの放出も計画されている。昨年12月にベンガルヤマネコも野生に放出された。
この1年以上のコロナ禍、ある意味の野生動物にとっては幸運で、昨年はクジラ、イルカ、さらにジュゴンまでがタイでは今まで見られなかった海域に戻って来ている。
*掲載写真:アンコールの森のボウテナガザル 画像:Wildlife Alliance提供