ー考察ー
カンボジアのコロナ禍・第3派は、当初の想定を超えて今や「終わりが見えない」という政府広報を一手に引き受けているクメールタイムズ紙 Khmer Times は見出しを掲げている。
既に4月半ばから新規感染者の確認でそれまで8割近くを占めていた中国人、ベトナム人から地元住民:カンボジア人になった時から一気に拡大し、それが最大の危機的様相を生んだ。すでにこの時点では感染経路が追えず、情報相が警告、呼びかけをするようになったということは、保健所がコロナ禍を統制できななくなったことを物語っている。そして4月下旬にプノンペン都がロックダウンに入った。5月22日にロックダウンを終えた時点で政府・保健省は明らかにコロナ対策を転換した。要は感染経路を追うことが全てではなく、その力をワクチン接種に入れるべきだと。意外にもカンボジアのワクチン接種は臨機応変でプノンペン都から接種キャンペーンを始める一方で並行して都内のレッドゾーン(感染ホット地域)や工場労働者に接種重点をいち早く移した。当初は軍人が先ず優先と言っていたが、かならずしもそれに拘泥せず、臨機で柔軟な接種の進め方は評価していいだろう。
プノンペン都では先が見えてきた 地方の大変さはしばらく続く
さてKhmer Timesは「終わりが見えない」と見出しを掲げたが、政府や都知事の動きを見ていると、「先が見えてきた」と思える節がある。特にプノンペン都では。確かに一昨日は、ここ数週間は感染スポットが局地的であったが、都心部のボンケンコン市場の大規模クラスターに驚く。だが、そこ以外の感染者確認、訪問地は局地的、年齢も絞られるようだ。
プノンペン都の場合
・ボンケンコン市場、裁縫・靴工場以外でここ2週間、大規模クラスター感染が発生していない。特にボンケンコン市場は例外でる*。
・プノンペンを東部を除いてドーナツ型の感染地域や都心部の劣悪な住居群では感染者が存在し、全て見つかっていない。また、そうしたところでは、当局が躍起になってもワクチン接種漏れが出る。
・情報省より感染アラームが出るところは、カフェ、レストラン、高級服飾店及び銀行である。要は中級以上の若者か裕福層の若者、家族の行く所である。こうした者たちは、ワクチン接種は終えるやもう大丈夫と遊びまわる無知な連中である。ここに裕福そうでない感染地域の若者が遊びと背伸びで集まるところが多い。それにモール内の高級服飾店も触って見るだけの周辺部からくる若者も多い。だから上記の場所で爆発的なクラスター感染につながっていない。
・ボンケンコン市場の大量感染者の確認は驚きだが、訪れたことがある人は解るが、日本人にとっては清潔な環境とは言い難い。またそのこで労働者となれば、周辺部から集まる人が多い。要はワクチン接種のいきわたらない人が言える。
プノンペン都のワクチン接種状況の進展を見るに人口の6割を占めるのは、実際は7月末でその効果が眼に見える形で現れるのは、8月10日以降であろう、と筆者はみている。だからまだ、安心はできないが、気をつけていれば感染危険は避けられる。特に常識ある外国人は、と思っている。
今、深刻なのはプノンペン都ではなく地方の省都や国境沿いの州、経済特区と言われた工場街である。ようやくワクチン接種が始まったところが一番危険地域である。こうした地方が収まるのは、プノンペンより2か月は遅れるであろうと筆者はみている。
最大の懸念はタイから帰国する出稼ぎ労働者の変異種
そして政府や保健省が最も恐れているのは国境地帯や空港での検疫体制である。感染力が従来の5倍、重症化率も数倍という各種の変異種の流入である。その点では、ベトナム側よりタイ側が危ない。対策の徹底と言う点や変異種の流行という意味ではタイのほうが大変である。これをワクチン接種の普及でどう乗り越えるか、その点でカンボジアは中国製であってもワクチンが確保できる優位さでは、タイやベトナムより有利である。ここで重要なのは、ワクチンでできる抗体は変異種にも有効である点である。変異種感染力の高さとワクチンの有効性は関係がない、というのが科学的事実(エビデンス)である。
掲載写真:Khmer Timesより