世界のニュースでは、米国の選挙をめぐる混乱に乗じてワクチン外交を東南アジアで進めていると報道されていた。このほどフンセン首相は、「カンボジアに中国のシノファーム社が製造した100万回分の新型コロナウイルス(Covid-19)ワクチンの即時提供を受け入れる」と述べた。
先ずは中国製ワクチンを50万人分受け入れ、接種を始める
1月15日夜に発表された市民に宛てたフンセン首相の音声メッセージでは「カンボジアは申し出を受け入れ、予防接種の優先リストにある50万人にそれらを使用する」と述べている。
フンセン首相は12月、カンボジアが世界保健機関(WHO)のCOVAXイニシアチブによって安全で効果的であると認定されたワクチンのみを使用すると述べたが、それを取り消したことになる。同首相は、「世界的なパンデミック状況の継続的な進展により、WHOがシノファームワクチンに承認する以前に、カンボジアは中国の援助を受け入れるようにした」と述べた。「緊急事態のため、これ以上待つことはできません。この悪質なウイルスに感染することから国と人々を守ることは絶対に必要であり、私たちは今ワクチン接種を進める必要があります。」「私たちは、このワクチンが中国の指導者と何百万もの市民によって害を及ぼすことなくすでに使用されていることを考えると、このワクチンが安全であるという強い保証と良い証拠を持っています。」「そして、インドネシアのように、大統領がすでに中華人民共和国からこのワクチンを使ってワクチン接種を受けている国があります」とフンセンは中国製ワクチンの受け入れを説明している。
欧米が使用しているようなワクチンを受け入れる設備がない
さらに「現在中国のワクチンを受け入れる他の理由は、現在使用されている他のワクチンのいくつかとは異なり、輸送と保管が容易だったということである」と付け加えている。要は「シノファームワクチンは摂氏2度から8度の間で保存できるが、他の国からのワクチンはカンボジアが提供するために装備されていない少なくともマイナス70℃の貯蔵温度を必要としている」と他の欧米諸国が使用しているようなワクチンを保存する設備がないためであると言っているに等しい。
「私たちの友人である中国が、カンボジア王国に対する寛大さと友情の精神から100万回分を提供してくれることをうれしく思います。」さらに同首相は、「1600万人の総人口のうち1000万人から1300万人、または国のおよそ60から80パーセントがワクチン接種を受ける必要がある」とも説明した。
ワクチン接種優先順位:医療従事者、教師、軍隊、警察…
そこで同首相は、「医療従事者、教師、軍隊、警察、掃除人、バイクタクシーやタクシー運転手などのサービス労働者などの優先リストに載っている人は無料のワクチンを受ける」とも述べている。
「中国の王毅外相は昨年10月にカンボジアを訪問する前に予防接種を受けており、その頃に中国がワクチンの提供を申し出たが、カンボジアは立ち止まり、中国の状況がどうなるかを見守っていた」と中国製ワクチン受け入れの転換経過を述べた。
中国製ワクチンの有効性につては? 緊急避難性の含みで受け入れ
先ずは首相自らが1月17日に接種の申し出
しかし同首相は、「このワクチンは、長期的な有効性がはっきりとはわかりませんが、少なくとも部分的には問題の解決に役立つと強く信じています。しかし、それは中国のワクチンだけでなく、すべての国のワクチンにも当てはまります。今のところ、それらのいずれかによって付与された保護が数か月または数年続くのか、それともあなたの生涯にわたって続くのかは誰にもわかりません。」という中国製ワクチン効果については予防線を張った発言をしている。そのため、より有効なワクチンが認められれば、それに切り替えることもあり得ることを示唆しており、必ずしも中国製ワクチンを信頼しているわけではなく、緊急避難性で受け入れていることをその演説に含ませている。
なお、ここワクチン=予防接種キャンペーンへの国民の信頼と協力を得るために、「フンセン首相は1月17日に彼が予防接種を受ける最初の人になることを志願した」と発表した。
*掲載写真:Phnom Penh Postより