5月18日、カンボジア国内メディア:Phnom Penh Postは「首相は靴投げについて振り返る:言論の自由か暴力行為か?」とい見出しで靴を投げつけた男性の画像と名前を掲載した記事を報道した、カンボジアに言論の自由があるかどうかなら見出しとしては納得できるが、「言論の自由か暴力行為か?」というのは奇妙な見出しである。どちらかではなく、その2つは別物であり、言論の自由があっても一方的な暴力行為はどこの国であれ禁止されているのは自明のことである。法とは最小限の道徳であり、フンセン首相の言うように米国で起こったことであり、米国の法律に照らして裁かれよることも自明である。
Phnom Penh Post の報道によれば、5月17日、フンセン首相は、米国滞在中に靴を投げた男性が「言論の自由を行使していたのか、それとも敵意の行為だったのかを疑問視した」と記述する。
フン・セン首相は12日、「米国のワシントンDCで開催されたASEAN-US特別サミットへの訪問中に、支持者の群衆に挨拶し、彼らと一緒に自撮りをしているときに、Ouk Touchという名の男、カンボジア系アメリカ人が彼に靴を投げたという。タッチ Touch の投げた靴は首相から外れ、写真を撮っていた支持者の電話に当たった。その後、警察の介入が行われる前に、タッチは出席者に追い払われたと」いう。その後のPhnom Prnh Postの報道は、Khmer Timesの報道内容と重なるもので新たな情報はない。
Phnom Penh Postは「私たちは[タッチ]を支持しているプノンペンのグループを知っています、そして彼らは彼らが誰に靴を投げるかについて注意するべきです。それは脅威ではありません。それは私自身の法的および政治的分析にすぎません」、「タッチを支持する人々は彼の行為を英雄的だと見なしているようだ」と首相の言葉を引用し、さらに首相は「挑発に直面しても冷静で寛容を維持するよう支持者に呼びかけ、彼ら(支持者たち)の怒りはもはや制御できなくなるほど大きくないことを望み、市民社会組織がこれに関する彼のコメントを故意に誤解しないように警告した。」と述べている。
これもKhmer Times同様にフンセン首相の発言を引用しているが、要は「靴投げつけ事件」をフンセン首相が本国にも「大事にしてはいけない」と指示する大人の対応をした内容であって、その趣旨を述べるために首相特有の反フンセン派の「米国の言論の自由」を持ち出し批判する姿勢に対して皮肉を言ったに過ぎない。
その皮肉の一端を切り取りしてさも大事そうに見出しにすること自体(Phnom Penh Postの記事)がフンセン首相の姿勢:大人の対応に一致するものであるか、には疑問がある。読み方によっては、贔屓の引き倒しの感がある。忖度し過ぎか、で無理な見出しである。
*下の記事を参照に
フンセン首相の皮肉;在米カンボジア人系を支持基盤とするサムランシー派をちょっぽり意識した皮肉で、首相のスピーチの内容自体には米国を批判する意図はなく、日頃「米国には言論の自由があるが、カンボジアは…」という海外の反フンセン派を皮肉ったに過ぎない。過敏の反応したら、大人の対応ではないということで事件に対する首相のスピーチは抑制されたものであるが、その意を受けたカンボジア政府の見解が17日になってKhner Timesの報道になったことは、これまたそのことに証左である。
なお、この「靴投げ事件」が世界に知られたのは、イラクで記者会見したブッシュ大統領に靴を投げつけた事件である。
*「靴投げ事件」:ブッシュ大統領への靴投げ事件。2008年12月14日にイラクを電撃訪問したアメリカ合衆国のジョージ・W・ブッシュ大統領が、イラクのヌーリー・マーリキー首相とともにバグダッドでの記者会見に臨んだ際に、イラク人記者のムンタゼル・アル=ザイディから靴を投げつけられる事件が起きた。これが世界的な報道となり、相手に靴を投げるつけることが、アラブ世界では侮辱的なことの表現であるということが知られた。ーWilopedia より抜粋ー
掲載写真:首相に靴を投げた男:Ouk Touch 画像: