国家警察は、カンボジアで100万ドル以上の身代金を求めて拘束されているというビデオメッセージを受け取った両親が当局に助けを求めた日本在住中国人女性が、カンボジアのホテルで一人で無傷で発見・救出された、と発表した。
国家警察総委員会は7月26日の記者会見で、日本に留学してカンボジアに来た中国人女性を騙し脅迫し、身代金を強奪した誘拐事件について発表した。国家警察総委員会・外国ホットライン作業グループのメンバーであるカイ・ヴァンナラ氏は記者会見で、7月19日にカンボジア国家警察はサー・ケン内務大臣の公式フェイスブックを通じて情報を受け取ったと述べた。
日本に住む中国人女性のYさんは、カンボジアで人質に取られている娘LANさん(日本の大学生、19歳)を見つけ救出をカンボジア当局に要請した。要請した母親によれば、7月15日から母親が娘と連絡が取れなくなったいう。
7月17日、身元不明の人物から母親に電話があり、娘がカンボジアで確保されていると写真とビデオ付きで告げられ、身代金として2億円(140万ドル)を要求されたという。
母親の告訴を受けて、国家警察委員会の警察と出入国在留管理総局が協力して捜索を行った結果、ホテルで一人で滞在していた少女を発見したという。だが、国家警察によると、実際に、少女は加害者に誘拐されたわけではなく、女性も加害者も会っていなかったし、電話で話しただけで犯人がどこに拠点を置いているのかも知らなかったという不思議な結果になった。
国家警察による少女への取り調べによると、7月5日、身元不明の人物から娘LANさんに電話があり、「少女の銀行口座を通じたマネーロンダリングの犯罪で警察が加害者の1人を逮捕したため、少女に対する犯罪を捜査している中国の警察官である、と告げられた」という。その時、中国の警察官を名乗る電話の人物は、「彼女(Lan)に秘密を守るように言われ、もし誰かに通報したらあなた(娘)が逮捕され、家族全員が困るだろう」と脅したという。そしてLanさんは中国警察官を名乗る人物から次のように指示されたという。
・お母さんとの連絡に使っているLINEのアカウントを教える。
・口座内のすべてのお金をその人物に送金するため、Lanさんは 75,000 円 (約 5,000 ドル) を送金した。
・口座への入金と送金には、さらに 500 万円 (約 35,000 ドル) を稼ぐ必要があります。必要な金額を稼ぐことができないため、犯人は彼女に、マニキュア、ハサミ、セロハンテープを買う場所を探すためにカンボジアに行き、傷に印を付け、その後、誘拐役を演じている自分のビデオを準備するように彼女に述べたという。そして被害者のビデオを受け取った人物は、それを家族に転送して2億円(約140万ドル)を恐喝し、その後3,000万円(約21万ドル)で交渉を行ったという。
その後、日本の被害者(Lanさん)の家族はサー・ケン副首相兼内務大臣の公式フェイスブックに苦情を訴えたのことである。
国家警察が被害者発見後、カンボジア当局は日本に住む家族に子供を迎えに来るよう連絡した。「Lanさんは、カンボジアでは誘拐されていない」と主張していると警察は発表している。
7月26日の夜に、当局は彼女を家族の元に返し、Lanさんと家族はカンボジアを出国したという。
報道を読むに、被害者Lanさんの証言は非情に奇異であり、狂言の可能性もあるが、一方でカンボジアに跋扈する中国マフィアの典型的な中国人富裕層をターゲットにした典型的な誘拐・脅迫・詐欺事件にも見える。少なくとも日本在住の母親に身代金を要求した人物がいたことは、事実であろう。実際の被害は被害者Lanさんが中国警察を名乗る人物に送金した額である。
この被害者の日本の大学生(中国人Lan)の証言(カンボジア国家警察の発表)は文字通りには受け取れない。
当然、日本の警察からの事情聴取は免れないであろうし、そこからの真相の端緒となる証言が期待される。今や世界各地で問題になっている「中国警察の他国での主権侵害」をヒントにしたような犯罪内容だが、現地では奇妙で複雑な事件と報道されているように、現時点では身代金強奪未遂事件であるが、その真相の解明は日本の警察に委ねられているようだ。
掲載写真:Khmer Times