この3日間ほど何度も政府系広報を一手に引き受けるKhmer Timesが報道する事件がある。それは、或る有名人を被害者とする銃器強盗で10数人が逮捕され、あろうことかその強盗の首謀者が新政党の党首であるという、センセーショナルな事件である。当然、地元のカンボジア人たちに大きな話題となっている。また、事件に不可解な点が多く、動機、被害者の証言の一転、警察による政党の党首である容疑者のスピード逮捕・自白、また容疑者と認定された理由の不透明さ、逮捕後に強盗に使われた武器の発見写真の掲載など事件の重大さに比して解らないことが多すぎる。とうぜん、Khmer Timesならずとも地元の群小メディアが早速ハッスルして同事件に飛びついたようだ。
Khmer Timesの英語版では同事件を3日間で4つの記事を掲載した。
先ずは、12月20日付けのKhmer Timesの報道
プノンペン警察は、オンラインの有名人(オンラインでローション販売)が昨日プノンペンで「900万ドルから1000万ドル」を奪われたと主張するメディア報道を明らかにしたという。
それによると、プノンペン首都警察委員会からのソーシャルメディアの投稿では、委員会は地元メディアの報道に反論し「有名なローション販売者であるアン・シュー・メイの家から盗まれたネックレスは3つだけである」と述べた。
「一部のメディアが発表したように、500万ドルまたは1000万ドルまでのお金の損失はありません」
と、被害者:シエフメイ夫人の家で財産を奪い、金と宝飾品を合計1000万ドルに略奪した人々のグループの事件について発表されたいくつかのニュースを明確に否定した。
この事件、12月19日の午前10時50分にポウ・センチェイ地区の Choam Chao 区Kork Chambok 村Villa V01で発生した。
ポーセンチェイ地区の警察によると、被害者とその家族は、少年4人、少女3人、子供3人を含む10人で、コンポンスプー県に向けて出発する準備をしていたところだった。突然、家の敷地に停まった車に座っている容疑者4人のグループが降りてきて、被害者が立ち去るのを阻止し、被害者に、命令を実行するために省庁から来たと伝えた。容疑者は、1つの長い武器と3つの短い武器で武装し、被害者:シエフメイ夫人 An Sieu Meyに手錠をかけ、自宅の1階に連れて行かれたという。容疑者たちは被害者に金庫を開けさせ、容疑者が持ってきた黒いバックパックにすべての宝飾品を入れさせたという。
事件後に警察が呼ばれた時、被害者は当初、ほぼ1000万ドルを奪われたと訴えた。だが、さらに警察が質問した後に彼女は自分の主張を3つのダイヤモンドネックレスだけであると訴えた内容を変えたという。
<奇妙な点>
先ず何故に被害者が被害額や物品名を警察でその主張を変えたのか。
21日付けKhmer Timesの続報1
プノンペン市憲兵隊・司令官:Rath Sreang中尉によると、政党: The Khmer Rise 政党の党首であるソック ソヴァン ヴァッタナ サブン Sok Sovann Vathana Sabung 別名:ウイリアム グラン William Guangは、オンラインでローションを売るの有名人An Sieu Meyを奪った武装ギャングとして家宅捜査が行われ10人を逮捕し、ソック ソヴァン ヴァッタナ サブンが武装強盗団の首謀者であると自白した、と述べた。 容疑者はビジネスマンであり不動産開発者でもあり、2018年に名誉毀損の罪で起訴されており、(武装強盗の首謀者であること)は間違いない、という。
事件の経緯は上記にあるように強盗事件は、2021年12月19日の午前10時50分に被害者の自宅で起きた。被害者とその家族は、少年4人、少女3人、子供3人を含む10人で、コンポンスプー県に向けて出発する準備をしていた時だった。自宅前から突然、車に座っている容疑者4人のグループが降りてきて、被害者が立ち去るのを阻止し、被害者に、命令を実行するために省から来たと伝えたという。その後の経過も上記の通りである(12月20日付けの報道)。その後、この記述はKhmer Timesで証拠であるかのように5回の記事に同じ文を掲載している。それ故に実に不可解な読みにくい記事である。
なお、警察は事件が起きた日曜日には早くも容疑者の目星をつけて動いていた、とKhmer Timesに語っている。
だが、これ以上の内容ある報道は出ていない。
<奇妙な点>
翌日には武装強盗の首謀者が割れ、逮捕され自白に及んだというスピード解決の異常な速さ
これはカンボジア人の多くが疑問に思っているし、何しろ情報が出ていない。
同日(21日)の報道2
Khmer Rise政党のリーダーであるSok Sovann Vathana Sabung AKA William Guangが、オンラインでローション販売の有名人An Sieu Meyの自宅に押し入った武装強盗に関連して逮捕されたというセンセーショナルなニュースを受けて、警察は今朝早く、ポーセンチェイ地区で強盗事件で容疑者が使用した車を追いかけるというドラマチックなカーチェイスの追走があり、容疑者がドアを開けて森に逃げるまで、特殊部隊が車を追いかけたという。
その後は警察当局は容疑者が逃げ込んだ森のある地域を封鎖し捜索後、2人の容疑者(男性1人と女性1人)を逮捕に至った。ポーセンチェイ地区警察検査官は、2人の容疑者をさらに尋問するため連行したという。
同警察は、容疑者たちが証拠を燃やして隠滅するために車を静かな場所に向け運転したのだ、と見ている。
22日の報道3
The Khmer Rise党の党首によって首謀された今回の武装強盗の被害者だったAn Sieu Meyの弁護士は、「Ms.Sieu Mey:彼女が強盗の首謀者との何らのかの関連にあった」という地元のメディアの報道を「根拠のない」報道として強く否定しました。同弁護士は地元メディアの報道を偽(フェイク)ニュースの報道と非難し、
「(地元メディアの)報道は誇張されており、2021年12月19日に自宅での強盗の被害者の評判、名誉、尊厳に深刻な影響を及ぼしていることを一般に知らせたいと思います。」「現在、被害者は肉体的および精神的に苦しんでおり、恐怖の中でいくつかの財産を失っているのに、地元のメディアは被害者の評判を落とすような誹謗中傷している」と述べている。。
プノンペンの軍事警察のロング・リシー少佐は昨日、容疑者:ソック ソヴァン ヴァッタナ サブンの尋問中に犯罪を犯したことを認めた、と述べており、容疑者は今回の強盗の首謀者であったが、彼の車にとどまり、そこから他の強盗たちを指揮したと語った。
そして突然、Maj Rithyという人物がKhmer Timesの続報3に登場し、「強盗の首謀者:ソック ソヴァン ヴァッタナ サブンが被害者を軽蔑したことを告白した」と述べた。「多くの人々が困窮していて被害者ほど多くのお金を持っていなかった時に、被害者が金、宝飾品、現金などの富を見せびらかすことがことが多かった」、また「彼は強盗の間、犠牲者の現金を奪うのではなく、彼女の宝飾品だけを奪ったと自白した」、「首謀者は被害者を挫折させ、嫉妬のために被害者から物品を奪ったと自白した。被害者は自分の富をとても誇示し、Facebookのライブでそれを見せるすることがよくあった」と言う意味の書き込みを(Maj Rithyは自分?)のFacebookページに21日に投稿していた、と語りだす。
Maj Rithyは、首謀者と他の容疑者が刑法第356条、第357条、および第490条に基づいて「状況を悪化させる窃盗」および「武器の無許可の所持」で告発されていると述べた。有罪判決を受けた場合、彼らはそれぞれ3年から10年の懲役に直面する。
以上、4つの連続する記事の要約がKhmer Timesの同強盗事件に関する報道の4つの記事の筋だが、4つの記事の内容では事件の経緯を4度も重複掲載し、なぜこれほど読者を混乱させるものなのか、と記事の理解と邦訳が非常に困難であった。また、Khmer Times の報道では突然登場してくるMaj Rithy氏は記事内容からどうやら警察の高官のようであるが、記事には所属も肩書の記述もないという奇妙な記事である。
<奇妙な件>
◇銃器強盗事件に関する最初の記事:先ず被害者が被害額を過剰に警察に報告し、後にその証言を覆した、それ だけだと「狂言強盗事件」とも受け取りかねない被害者の証言であった。
◇続報1で強盗事件の翌日に速攻で12人(男9人、女3人)の容疑者たちが逮捕され、その内の一人が政党: The Khmer Rise 政党の党首であるソック ソヴァン ヴァッタナ サブンSok Sovann Vathana Sabung 別名:ウイリアム グランWilliam Guangで、彼が19日の武装強盗グループの首謀者であった、と自白。(事件翌日の20日には12人の容疑者が逮捕されている。夜に警察へ連行、翌日21日のメディアには容疑者であった政党の党首が「首謀者」として自白。)
◇続報2では、同日に強盗事件の車を発見し、追跡によって男女2名を逮捕。
◇続報3では、
・被害者の弁護士が地元メディアの「被害者と首謀者には何らかの関係があった」という報道を強い口調で誹謗・中傷でフェイク(嘘、捏造)ニュースであり、被害者の名誉を貶めるものであるという文書を公表した。
奇妙な印象や疑心暗鬼を生みかねない報道
この銃器強盗事件は、発端から続報3まで新味のない事件経緯を4度も同じ内容を載せ、記事自体は上記にまとめた以外に事件情報自体に関わる新たな点はわずかである。各記事の内容は、文字数からいえば1/3以下で済むものに過ぎない。あたかも銃器強盗事件を強調するために新味な情報が少ないためか、4度の記事をこれでもかという報道を重ねて、かえって外国人なら奇妙な、地元の人たちなら疑心暗鬼にかられるような報道である。事実、カンボジアのSNSには様々な疑心暗鬼なコメントや素朴な疑問が書き込まれているという。
掲載写真:全てKhmer Timesより。