首相の家族と政府高官に中国製シノフファームの接種が始まる
Lt Gen Hun Manet getting his Sinopharm injection at the Calmette Hospital yesterday.. KT/Khem Sovannara

カンボジア軍の副最高司令官であるフン・マネ氏は昨日10日、カメラの放列の前にカルメット病院で中国製のシノファームワクチンを接種した。

このニュース、実は日本でも放映されている。カンボジアがニュースになるのは日本人がらみの事件か、在日のカンボジア人が事件を起こすか被害者になるか、時折り思い出したかのようなアンコール遺跡群の話題か、米中対立の代理の場であるカンボジアが登場する以外、めったにニュースなることはない。ここでは米中対立が先鋭化する場としてカンボジアとしての話題であることを承知しておきたい。

*動画:ANNニュース

王国での予防接種を初めてしたマネ中尉は、安全なワクチンを服用して新型コロナウイルス(COVID-19)から身を守るよう人々に呼びかけた。

「カンボジアの人々は、中国の友人から寄贈されたワクチン、シノファームに感謝しています。また、人々にワクチンを接種するために可能な限りの努力と手段を講じてくれた政府にも感謝します」と彼は付け加えている。

既に読者はご存じのようにフンマネ副司令官はフンセン首相の息子で外国の報道では首相の後継者と目されている人物であるが、首相自身はそうした権力移譲の露骨さへの批判をかわすためか、年長の近親を後継者とすることを宣明しているが、息子に引き継ぐ中継ぎに過ぎないという意見もある。

カンボジアの友好国・北朝鮮王朝に似た権力移譲説が有力だが、それがうまくいくかどうかはアンコール王朝史を紐解くとヒントがある。アンコール王朝に限らず、カンボジアの王朝は似たような名前で何世と名乗るが、それは古代インド的世界観からくる権威付けで実際は実力ある親族や黒子としての宰相であるバラモン僧による王朝の簒奪史である。近年もまたノロドム系とシハモニ系があるように近親間権力移譲である。そして何よりも実力のある者が権力を握る。タイやミャンマーのように軍部のクデターが日常的だが、よく見れば軍部上層部の権力争いが日常的で親族間ではない。

ところでマネ副司令官は、彼の兄弟も予防接種を受けており、これはすべてカンボジア人の安全と福祉に配慮している政府によって可能になった、と述べた。先ずはフンセンファミリーと軍の上層部からということを物語っているに過ぎない。彼は「この困難な状況の中で、私たちは自分自身、家族、そして社会を守る必要があります。ワクチンの注射は、COVID-19ウイルスに対する私たちの防御です」と付け加えている。

一方、フン・セン首相は10日、彼のフェイスブックのページで「シノファームワクチンを服用し、ウイルスから身を守ることが主な関心事であるワクチンのブランドについて過度に心配しないように人々に促した」ている。これは言わずもがなで、それだけ中国製ワクチンに関して不信感が人々のなかにあることを物語っている。

また、同首相は「すべての国が市民のためにワクチンを入手したいと望んでいる市場で販売されているワクチンがあまりないので、人々は選択者になることができない」と付け加えている。要は全ての人に行き渡ることない、と言っているのである。また、日曜日に中国から60万回分のワクチン接種の最初のバッチが到着した後、10日、カンボジアが新型コロナウイルス(COVID-19)に対するワクチン接種の開始したため、「先進国に住む多くのカンボジア人、または最大98%は、ワクチンがないため、まだ予防接種を受けていません。国はお金を持っているが、生産が不足しているためワクチンにアクセスできない」と首相は説明している。

同首相は、中国政府がカンボジアに100万回のCOVID-19ワクチンを提供することを約束しており、そのうち60万回が7日に到着し、さらに40万回が将来いつでも配信される予定であると述べました。要は、カンボジアが確保できるワクチン量は100万回、要するに50万人弱となる。カンボジアの総人口が1600万人弱であることを忘れていけない。

日本のワクチン現状はカンボジアを笑えない

だが、日本人は笑えない。途上国としては精いっぱいの努力である。日本政府は昨年、ワクチンは全実人口分確保してあると言い、1月には接種は2月に始まるといったが、今日は2月11日、たった1万人分しか実際には手にしていない。河野大臣は嘘をいっていないだろうが、政府の発言の勢いは日ごとにトーンダウンでワクチンについては怪しくなった。大臣は、「約束したが確保はしていない」という。それが正直なところであろう。トランプ流のアメリカ・ファーストをワクチンに関してはバイデン大統領も踏襲し輸出規制をかけ、それを怒ったEUもまた同様に輸出規制、EU内でも旧西ヨーロッパと東ではワクチン確保に格差があるといったワクチン争奪戦が始まるが、どうやら日本は蚊帳の外、危機になると今更お金を積み上げても相手にされない。要は端から日本政府の詰めが甘かったに過ぎないのである。日本でのワクチン接種、始まっても混乱を繰り返しながら大幅に行き渡るに遅れるだろう。

おすすめの記事