フンセン首相は2日、ミャンマーの軍事政権トップのミン・アウン・ライン将軍とのオンライン会議に臨み、アセアン議長の特使による2回目の訪問を要請し、アウンサンスーチーを含むミャンマーのすべての関係者へのアクセスの重要性を繰り返し要請した。
外務省の報道リリースによれば、カンダル州タクマウ市の首相官邸から行われたアウンフライン元首相との3回目のオンライン会議で、「アセアンの5点合意の実施」に向けて意見交換を行うよう要請したと述べた。
これに応えてミン・アウン・ライン将軍は、「他の関係者との会合を促進することを約束した」と付け加えた。フン・セン氏は会議で、コンセンサスの迅速な実施に対するあらゆる方面からの願望が広く表明されていると述べた。さらに「法と秩序を維持するために過度の力の行使を避けることが重要である」と指摘したという。
会談 軍政は外交儀礼に終始、ASEANの要求に応えるは意思は無い
ミン・アウン・ライン将軍は、ミャンマーが現在の危機の平和的解決策を見つけるのを支援するカンボジアの努力に感謝の意を表明し、ミャンマーの58の病院と保健センターへの寄付されたCovid-19ワクチンと医薬品の配布の感謝を述べた。またフン・セン氏に、持続的な暴力への対応を含むミャンマーの最新の状況について説明し、すべての民族との停戦協定を交渉するための国内の民族武装組織(EAO)と暴力を終わらせるための努力の一環として、アセアン議長の特使によるEAOとの関与を促進すると答えている。
ASEANからの要求を外交儀礼でかわし、軍は抵抗組織を分断する政策
忘れられた戦場もウクライナ情勢次第
ASEAN議長国としてフンセン首相は「アセアンの5点合意の実施」を求めたのだが、軍事政権側は回答は外交儀礼上の対応以上の内容に触れることを避けている。既にミャンマーのミンアウンフライン(Min Aung Hlaing)国軍総司令官は27日、首都ネピドーで行われた軍の記念日の式典で演説し、民主派抵抗勢力を「全滅させる」と述べ、強硬姿勢を示している。それ故、肝心のミャンマーの情勢の全て当事者へのアクセス、及び当事者との会談の実現を軍政トップに要請したのだが、端からASEANの要求を受け入れる気はなく、国内の少数民族武装組織のみ相手にするという軍政側は抽象的な言辞でフンセン首相の要求には事実上応えていない。ミャンマー軍政の民主派抵抗勢力を「全滅させる」と強硬政策を宣言し、国内での広汎な反軍政力に対し、各種の少数民族武装組織を民主派勢力から切り離し、民主派を文字通り根絶やしにする姿勢に何等迷いがない。それだけ非合法なクーデターで権力を奪った軍事政権は民主派と少数民族の反軍勢力の連帯に手を焼いているというのが現状である。今年2月24日のロシアのウクライナ―侵攻でミャンマーは「忘れられた戦場」とも言われているように世界から孤立している軍事政権にとっては侵攻は民主派壊滅への千載一遇のチャンスであるが故に、3月27日に民主派抵抗勢力を「全滅させる」と呆れ果てた宣言を出したのだが、軍政の思い通りにならないのがミャンマー軍政への国内での広汎な人々の反感である。軍事力では優勢な軍であるが、その強硬策は残忍さを極めており、中国とてミャンマーの将来を見据えて表立った軍政支援はできず、欧米と対立状態のロシアもまた、ウクライナ侵攻が思い通りならず、ミャンマー軍部が描いたシナリオも必ずしもうまく行っていない。ASEANからの要求は外交儀礼ではぐらかし、その上で残忍な民主派壊滅に全力をあげているというのが実態である。ウクライナ情勢が落ち着きを見せれば、軍政はますます孤立し、民主派勢力への欧米やASEANの支援が高まることは必定である。軍政はデッチ上げの罪でアウンサンスーチ氏に罪を自作し、刑期を幾重に重ねているのことからも明らかである。