
東京新聞は、「特殊詐欺の拠点 カンボジアに圧力を」という見出しの異例な社説を8月26日に掲げた。
カンボジア北西部ポイペトの特殊詐欺の拠点で拘束された日本人29人が日本国内へ移送され、愛知県警に詐欺未遂容疑で逮捕された。だが、これは氷山の一角に過ぎないと主張する。
*下の記事をご参照ください。

「カンボジアではかねて一部の犯罪組織が政府・与党中枢の庇護(ひご)を受けているとされ、積極的な摘発に転ずるよう日本も外交圧力を強めるべきだ」と社説で日本政府の対応を要求している。
また、カンボジアでは15万人以上が特殊詐欺に従事し、年間収益は125億米ドル(約1兆8千億円)を超えるとの推計もある。規模は拡大を続けており、英国の調査ジャーナリストは「少なくとも四つの大規模な詐欺拠点が建設中。すさまじい増殖ぶりだ」と指摘する。
カンボジア当局は詐欺組織の摘発に消極的だ。愛知県警は既に1月に拠点を特定したものの、カンボジア当局が、ようやく29人の拘束に踏み切ったのは5月27日。フン・マネット首相の訪日に合わせたタイミングで、日本政府に対する「手土産」との見方が根強い。
カンボジアでは、政府高官を含む与党幹部らが関与する企業が、犯罪組織から利益を得ているケースも報告されている。
フン・セン上院議長、フンマネ首相は、日米と中国の対立が激化する中、バランス中立外交に腐心している。中国の習近平(しゅうきんぺい)国家主席が4月に訪問した直後、中国の援助で拡張工事を終えたばかりのリアム海軍基地への海上自衛隊艦艇の寄港を認めたことも、その一例といえる。
「外交上の綱引きで、日米と中国の双方が、カンボジア政府に強い姿勢を取りにくい状況が続く中、カンボジアが特殊詐欺の中心地となってしまった面は否めないだろう」と指摘し、日本の今年前半の被害額は約600億円と過去最悪ペースだが、さらに特殊詐欺の被害拡大に頭を抱えているのは米国、中国も同様である。『脱・詐欺』を促すカンボジアへの外交圧力でなら、日米と中国は連携できるのではないか」と日本政府の外交に注文している。これはまた米国も歓迎することであるとも主張している。
東京新聞の社説は日本政府への外交姿勢への注文であり、日本国内の近年のカンボジアへの国民感情を反映したものと受け止められれている。
掲載写真:5月に摘発された詐欺拠点(ポイぺト)東京新聞

