カンボジア外務省・国際協力省及び国営通信のプレスリリースによれば、日本はカンボジアに対し、「全国継続運用基準点ネットワーク構築プロジェクト」の実施に13億3,800万円(970万ドル)を提供することになった。
カンボジア王国の副首相兼外務・国際協力大臣:ソクチェンダソフェアと在カンボジア・日本大使上野淳駐は、2023年10月26日会談後に、上記のプロジェクトに対し日本の無償資金協力を通じて支援するという。
本プロジェクト事業は、継続運用する基準点ネットワークの整備により「地籍調査の迅速化」、「土地登記に関する行政サービスの強化」を図り、さらにインフラ事業の推進に貢献することを目的としている。
日本の支援は、経済社会発展を促進するため、ほぼ20年以上、カンボジア政府の努力に継続的支援を行っている。同支援は、国交樹立70周年を迎える両国間の全面的な協力を強化し、「包括的戦略的パートナーシップ」を強化することに貢献するであろう。
なお、こうした私的所有権や土地取引に欠かせない地籍調査であるが、カンボジア政府は隣国との国境交渉等で植民地時代のフランス政府測量の地図を持ち出しているように、現在市販されている地図の基準はフランス統治時代の地図や1970年代の米軍測量の地図が基準となっている。ちなみに日本では5年に1度ほど改定される国土地理院調査の2万5千分の1や5万分の1の地形図が基準で、同地理院は休みなく次の改定に向けて国土の測量が行っている。この地形図があって、それを基準にはじめて市販の各種地図の厳密性が保証される。国土の地形図測量は国家の主権を基本づけるものであるが、カンボジアは、いまだ自力で自国の基準となる全国地形図は作製されていない。ちなみに隣国タイはカンボジアとの国境交渉では、タイ自作の地形図をもって交渉に臨んでいる。
伊能忠孝の実測図が当時の先進国のなかでも画期的であったのは、幕末期に開国交渉で来た諸外国の交渉団が、「これほど精密な地図があるなら、我々の測量は必要としない」と言ったエピソードからも分る。今回の日本支援はカンボジアという国家の主権、国造りの根本の支援に当たるものです。支援というと「ああ、またお金出した」と思いがちだが、日本の今回の支援は、インフラ整備以前の国家の土台作りに重要な支援で、そこにはお金以上に基本的な測量技術・能力の移転という支援が含まれている。
なお、無償資金援助の原資は、日本国民の税金からです。そのため、プノンペンの公共バス等に「from Japan people」の文字が見られるのです。これらの光景は、「ノーパンしゃぶしゃぶ事件」をきっかけに起こった批判に応えて行われた日本の外務省改革以降に見られるものです。
日本の対外援助(ODA)も途上国の特権層の腐敗を促進させているという批判が長くあり、その見直しのなかで「草の根無償資金協力制度」が生まれました。この資金協力は「相手国からの要請」が援助の原則となっています。
掲載写真:国営カンボジア通信