政府の 5 年間の教育成果報告書によると、カンボジアで修士号を取得するために勉強している人の数は、2020 年の 23,256 人から 2021 年の 9,984 人、つまり 57% に大幅に減少した。さも、ありなんという数字である。大学へ進学しても実態は、多くの学生が中途退学している。
6割の院生が戻って来なかった!原因はコロナ禍か?
Mengly J Quach Education Plc の会長兼 CEO Quach Mengly 氏によると、数値の大幅な減少にはいくつかの理由があるという。
「最初の理由は、Covid-19 のパンデミックが原因である可能性がある。2 つ目の理由は、その間にほとんどの学校が閉鎖されたことです。」さらに「もう1つの理由は、Covid-19で財政が影響を受けたため、一部の学生がそれを授業料を支払う余裕がなかったことです」とMengly博士は述べている。その理由について、「パンデミックの間に多くの企業が閉鎖され、その結果、多くの家族が高等教育を受ける余裕がなくなった」と付け加え、「一部の学生は、パンデミックが始まったときに勉強を延期し、遅れが長すぎてあきらめること」にした可能性があるという。「そのため、彼らはパンデミックの間、最初に生き残るためだけに働くことになりました。誰もが生き残るのに苦労し、Covid-19 が終息するのを待っていました。そしてそれが終わったとき、彼らの財政は影響を受けたので、彼らはすぐに高等教育を受ける代わりに仕事を探す必要がありました」と Mengly 博士は言いました。
学位自体にほとんど意味がない、大学教育、学生の質に問題がある
Mengly 博士によると、大学での就職や昇進を希望する教員には、修士号または博士号が必要であるが、「しかし、人々が学位だけに頼り、実務経験がない場合、仕事を見つけるのは難しい場合があります。」「私にとって、人々が大学院に進学し、少なくとも修士号または博士号を取得することは非常に重要です。しかし、重要なのは学位の数ではなく、学位の質です」と Mengly 博士は述べている。
メングリ博士にとって、カンボジアの教育の質は依然として疑問視されており、大学が請求する授業料が低いことを考慮して、カンボジアの大学がどのように生き残り、運営を継続しているかについて疑問も呈している。
「高校の授業料は平均で約 1,000 ドルで、教師の時給はわずか 4 ~ 5 ドルです。」「しかし、大学では、授業料はわずか 600 ドルから 700 ドルで、講師の給料は 15 ドルから 25 ドルです。では、高等教育はおろか、どうやって大学生の教育を授ける余裕があるのでしょうか?」メングリ博士は問いかけた。さらに、「カンボジアのほとんどの大学院生は高等教育に真剣に取り組んでおらず、同時に働きながらパートタイムでしか勉強していない」と付け加えた。カンボジアでは、誰かが医学または歯学を専攻する予定がない限り、修士号または博士号は実際には必要ない。
「あなたが良い性格や性格を持っていれば、資格以上のものです。そして、コミュニティ活動、仕事の経験、インターンシップがあれば、さらに良いでしょう。」
「カンボジアで修士号や博士号を持っていても、実務経験がない人にとっては、何の意味もないこともあります。海外から学士号を取得した候補者を採用した方がよい場合もあります。通常、彼らはよりオープンで、経験豊富で、意見が多様であり、ある意味でより常識を持っている傾向があります」と Mengly 氏は言います。
同氏の話はかなり率直な意見で、カンボジアの大学及び大学院の実態に近い。実際、高校卒業試験=大学入学資格を経て大学に進学しても実際何人が卒業したか?その具体的な数値が公表していないのだから中途退学者が把握できない。それにこの国の公式統計自体があまり信用できない(水増しか過少報告が多い)。
全ては国がどう動くかにかかっている
上述のQuach Mengly 氏の述べたことを深読みすれば、
① 大学教員の授業の質が悪すぎる。
② 多くの学生の質が悪い。
③ 海外の学校卒のほうが優遇され、事実国内学生より質が良い。
となるが、③は結局、社会の大部分のエリート層は、富裕層の子弟に世襲されるということになる。ピーチン氏やラブロフ外相の娘さんが欧米で留学生活を経て優雅な生活を送り、一方でアジア系やムスリム系のロシア兵が圧倒的に多数戦士していることからも解る。それでいいのか?どうすればいいのか?という肝心な問いかけを Quach Mengly 氏はしていない。
①と②は、政府の施策次第である。
①、国立(公立)教員給与の引き上げと高等教育への公的支援の強化。Quach Mengly 氏の指摘を読めば、ほとんど国家としての教育投資がなされていないことが解る。
② 国家試験である高校卒業試験=大学入学資格の厳格化。これが一時の教育改革の最優先であったが、実際には合格率が25%という目も当てられない低さであったため、救済措置や合格基準を引下位き下げて合格率をあげる操作を政府機関がしているとしか、思えない。それ故に「6段階最下位Fで不合格の学生が俺たちを合格させろ!」と教育省に押しかけたという見っともない騒ぎもあった。が、これは見っともない事が過去に公然とまかり通ったことがあるからである。それは、医学部の学生が毎年のように騒ぎ、当局が甘やかしたからに過ぎない。おそらく、馬鹿学生よりも富裕層の保護者達が大学に圧力をかけたのであろう。多くのカンボジア人が、同胞の医者を信用しない原因はここにある。さすが、2021年には教育省は不合格を取り消さなかった。
①、②が解決すれば、自ずと③は解決する。事実、お金と親の社会的地位があれば、馬鹿学生を受け入れる「なんちゃって大学」なんて日本も含めてたくさんあるからだ。
事実、ウエストポイントという米国陸軍士官学校でさえ、米国政府の配慮で産油国の高位の馬鹿王子だって留学しているのである。これは、またアラブの産油国に限らず、出自格差が当然と思う人々が増えてきた日本とて似たり寄ったりになっている。「教育の機会均等」が国家としてきちんと保障できないところに、コロナ禍以上に重大な根本理由がある。
掲載写真:Khmer Timesより