今日よりタイ国境が再開 既に午前中12人.午後3時までに60人超の感染者確認

2週間のタイ国境閉鎖で帰国できなくなった出稼ぎカンボジア労働者家族がようやく帰国する。これからまた帰国ラッシュが連日となる。

それにしても上掲の写真、凄い写真だ。これがカンボジア人である。小さな川が国境線の川である。

1979年、全く逆の光景の写真を眼にしたことがある。ベトナム軍の侵入によってポルポト政権はバッタンバン州を通って北西部のタイ国境地域に逃げ込んだ。カンボジアの軍隊は家族連れである。それは今でも変わらない。2008年7月プリアビヒア寺院遺跡が世界遺産に登録されるやタイの軍部・王党派が煽ってータクシン派政権を追い込むためであるー、タイ国境沿いでタイ軍、カンボジア軍が対峙した。その年、2回目の取材でプリアビヒア寺院に行って驚いた。

カンボジア軍の塹壕や土嚢のトーチカに幼児の着物が干してあることだった。見れば、トーチカ内には奥さんや幼児が暮らし、塹壕の外で炊飯している。訊けば、カンボジアではこういうもの。もし家族が一緒でなければ、兵士たちの逃亡が相次ぎ、軍の態をなさないという(タイへの出稼ぎ労働者の帰国風景、幼児連れが多い)。塹壕もトーチカも遺跡の背景や内部に造られ、遺跡を盾としている。

プレアビヒア寺院はカンボジアの誇りです。」なんていう言葉を筆者は信じない。こうした言葉は政府の受け売りか、多くは街育ちの知ったかぶりの生意気な若者たちー田舎の人は国境紛争何て全く興味ー。

カンボジア人がどっとやってくれば、落書きが始まる。ゴミが散乱する。地方の寺院遺跡が集落近くにあれば、祠堂の内部はアンモニア臭である。アンコールワットでさえ、外国人を案内すると優に2時間はかかるが、カンボジア人は写真を撮れば終わりで30分でお帰りであるとカンボジア人ガイドは嘆いていた。

さて、上掲の写真、1979-90年、ベトナム軍が攻勢にでれば、ポルポト派兵士や支配地の住民はタイ側の難民キャンプに逃げ込むため、写真とは逆の方向に川を渡る。幼児を連れて。そしてベトナム軍の攻勢が終わり、ポルポト派の支配力が衰えると住民たちは飢えを凌ぐためにタイ側の農家へ泥棒に夜ごとに出かける。やがてタイ側の農家は自警団を結成し銃器を持ち出す。そうした自警団に追いかけれたカンボジア人から話を聞いたこともある。話し手はタイの難民キャンプに来た日本政府の調査団によって日本へ亡命できた。その多くは旧ポルポト派支配地の人も多い。やがて日本の長期滞在ビザを持ちながらカンボジアで実業家として成功し、現政権の副首相の名目上のスタッフになっている。筆者は彼女に直接取材した経験がある。カンボジア人は政府が何と言おうとこと自分がしたいと思ったことは良し悪しを超えて行動する。彼女もその通りだ、いう。

掲載写真のカンボジア人たちは正規の国境検問所を通らない人々である。越境ブローカーにとって通い慣れた道である。不法越境は「隔離施設を嫌って」、それもあるだろう。が、それ以上に正規の国境検問所は「国境再開で混んでいるから」が理由の大半である。コロナは身体に異変がなければ、いくらニュースや首相が呼びかけても聞いていない、もっと言えば「聞いて考えるのが嫌な人たちなんだ」、これはけして蔑視しているのではなく事実なのである。それにこうした人々にとって警官や偉そうに接する医療関係者や地区役員(多くは警察官)は、関われば何かと怒られお金をむしり取られるだけだ、という体験を何度もし、またそう思い込んでいるのだ。

タイから帰国した最初の100人の帰国出稼ぎ労働者に対して実施された第1回の検査で既に感染者12人を確認した。

タイ国境のカンボジア側には少なくとも6つの検査ポイントがある。陽性の症例者は、治療のために病院施設に送られ、他の人たちは隔離施設に送られる。検査サンプルはさらに精査され、インド変異種デルタ型か従来型に確認される。それは出先の検査ポイントでは判断できない。

バッタンバン州知事、国境再開に危機感露わに

バッタンバン州知事のNgoun Rattanak氏は、感染した人々を他の人々から即座に隔離するために検査が必要であると地元メディアに述べている。

これにより、検疫センターでウイルスが広がるリスクを最小限に抑えることができます。」と、国境に接する州の危機感も語っている。

タイからの帰国者、既に500人以上、午後には感染者60人以上を確認

午後の報道では、バンテアイメアンチェイ州知事Ou Rath氏は、タイとの国境が本日開かれて以来、国境で当局に拘束された労働者を含め、合計約500人のカンボジア人労働者がタイを離れて王国に戻ると述べている。同州知事は、帰国した労働者の中に、現時点で60以上のCOVID-19陽性症例があったとも述べた。これは、国境を接するたった1州の状況である。

本当の危機はこれからである。

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