タイ首相、コロナ集団感染で外国人労働者を非難!?
タイ 水産市場クラスター 封鎖された市場周辺 画像:日経新聞より

AFP=時事通信、記事の題名と内容の乖離

23日朝、時事通信はAFPの記事を元にしながら、「タイ首相、コロナ集団感染で外国人労働者を非難!?」という題の記事が出ていた。元記事の写しなら問題であるし、時事通信社側で名付けたのなら、記事内容と一致しない国家が危機になると排外主義が台頭する。古今の例を挙げるに暇がないほど多い。

中国の強弁、米国の自国ファースト、日本の自粛警察や感染者差別も同根である。米中共に性質(たち)悪いのは共に権力層がいずれも排外主義を利用、助長しているところがある。記事の題名を見た限り、人気低迷を続けている実質軍事政権であるプラユット内閣の責任逃れの排外主義の扇動か、「タイよ、お前もか」といったところだが、どうも題名と記事の内容とは違うAFP=時事の記事、情報の読み方の勉強になる。

不人気なプラユット政権、排外主義を煽るか? どうも違う!

<タイ政府、「プラユット首相は21日、今回の集団感染は不法外国人労働者を雇っている工場の責任だと指摘。これらの労働者はミャンマーから不法入国しており、『こっそり(タイから)抜け出しては、戻ってくる」と非難した」というのが事実に近い。

ミャンマー人を非難と不法外国人労働者を雇う工場主を非難では大きく違う。記事ではこれらの労働者はミャンマーから不法入国しており、「こっそり(タイから)抜け出しては、戻ってくる」と非難し。だが、カンボジア人にも言える。毎年、数万人以上のカンボジア人が不法越境、不法滞在労働で強制送還されている。

これらは事実である。が、これはタイがミャンマー、カンボジアと交渉して解決を目指す以外にないのは明らかである。

もちろん日本でも同じ問題が起こっており、外国人排斥を韓国人に収れんさせる意図的な排外主義を常習化する者たちがいるが、こと「コロナ感染」では、この4月感染死者数で日本が韓国を抜き、日本の感染者数が急増するうちに排外主義は勢いを失くしている(参照:NHKの特設サイト:新型コロナウイルスを見れば一目瞭然)。巷(ちまた)では相手にされていない。一方、コロナ禍で就職内定率が下がり、非正規の若者たちが職を失う状況のなか、政府がせっせと東南アジア諸国に技能研修生集めを働きかけているということは余り知られていない。日本のコロナ禍の危機が大きくなれば、こうした日本が東南アジア各国に勧めた日本への外国人労働者の移入が、日本で排外主義の標的になる怖れがある

水産市場関連の感染者の大半はミャンマー人、異常な高さの感染率約42%

画像:水産内場関連の検査 ロンジー(腰巻)姿はミャンマー人

今回のサムットサコン県マハーチャイ水産市場関連の大規模クラスターの発生の感染者は22日に累計800人を超え、その感染者の大半はミャンマーからの出稼ぎ労働者で、エビ漁船や加工工場で働いている。タイ保健当局は、マハーチャイ市場の感染率は「約42%」だと述べている。これは、異常な高率で感染が出稼ぎ労働者に集中しているなら、いかにミャンマー人が劣悪な労働・生活環境であるかを物語っている。先ず追及されるべきは、そうした環境を放置した行政と劣悪な環境を強いた経営者たちに責任があることは、明らかである。

タイ政府もそれが解っているから「工場主の責任」と言っているが、行政の不作為の責任には触れていないようだ。こうした政府の姿勢は排外主義を煽るものではないが、行政の責任を不問にしており、高学歴の若者たちが中心のは政府・王室運動に参加する人々を納得させるものではない

現在、水産市場とその周辺の工場地区は19日以降封鎖されており、数千人の居住者は地区外に出ることを禁じられている。21日には市場の周りに有刺鉄線が設置され、地区内に残された労働者らに当局が食料を配布している、という。

タイ国民の動揺で歴史的な反ミャンマー感情、日本にとって他山の石

AFP=時事の記事によれば、「ミャンマー人タイ人が証拠もなくミャンマー人を責めるのは『不公平で、一方的だ』と話し、誰が検査で陽性になったか知らされておらず、労働者らは不安に陥っている」という。今回の集団感染で、タイ人の間では反ミャンマー感情が広がっている。
タイ経済は、隣国ミャンマーとカンボジアから来る数百万人の低賃金労働者に大きく依存しており、タイの水産業や製造業、建築業、サービス業はこれら労働者により支えられている。

タイとミャンマーの間はアユタヤ王朝の頃から歴史的な確執があり、そこに今回のコロナ禍、外国人出稼ぎ労働者は差別・排外主義に直面している。そしてそれを助長するかのようなAFP=時事の記事の題名であった。日本(報道も国民も)は「他山の石」とすべき教訓である。

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