タイが国境覚書の国民投票を検討中、カンボジアは反対するが…

タイの新政府がカンボジアとの主要な領土協定を無効にしようとしている中、プノンペンは国際法がそのような一方的な決定を禁じていることを明確にしている。

9月30日(火)、新たに選出されたタイのアヌティン・チャーンウィラクル首相は、タイがカンボジアと締結した2000年の陸上国境画定に関する覚書(MoU43)および2001年の重複する海上領有権主張に関する覚書(MoU44)をタイが破棄すべきかどうかを問う国民投票を政府が実施すると発表した。

アヌティン氏は、覚書は「物議を醸す」ものだと述べ、個人的には協定の廃止に賛成だが、まずは国民の意見を聞く必要があると主張した。

同氏は、内閣には覚書を即時撤回する権限があるものの、国民の参加を優先すると指摘した。

「これは責任転嫁ではなく、国民の声を尊重することだ」と彼は語った。

「覚書の下で合意に至らなかった以上、タイに何の利益もないのに、なぜ覚書を維持する必要があるのか​​?役に立つなら維持する。そうでなければ廃止すべきだ。」

アヌティン氏は、国民投票を進める前に、政府は下院特別委員会による合意内容の調査が完了するのを待つと述べた。

カンボジアはアヌティン氏の発表に好意的に反応しなかった。

国務長官兼法務省報道官のセン・ディナ氏は昨日、協定、特にカンボジアとタイ間の土地境界の測量および画定に関する了解覚書(MoU 2000)は一方的に撤回することはできないと述べた。

「したがって、2000年覚書は、その目的であるカンボジアとタイ間の陸上国境の測量と画定が達成されるまで有効です。いずれの当事者も、他方の当事者の同意なしにこの覚書から脱退することはできません」と彼は述べた。

国境紛争がねじれているのは、今年の武力衝突のきっかけがタイ首相とカンボジア上院議員の電話会談の内容がカンボジア側より漏洩し、それでタイ首相解任という政変まで生んだことである。

タイは従来のタクシン派と反タクシン派の対立を超えてカンボジアとの国境紛争への安易な対応は許されない状況となっており、国境紛争に対するタイとカンボジアの主張は大きく隔たっており、武力衝突にいたらなくともタイのカンボジアへの信頼関係は大きく下がっており、国境紛争が長期化する懸念がある。

例えば、国境紛争交渉ではどの地図を用いるかで両国の主張が異なり、カンボジア側の主張するフランス製地図は、20世紀前期のフランスによる植民地拡大にために現カンボジア西部のタイの影響力を奪うために起きたフランスータイ戦争であり、その結果押しつつけられた国境という認識が先ずタイ側にはある。

また、このフランスータイ戦争の結果に介入したのが日本であり、タイ側の主張も取り入れた和平が実現している。その結果が日本の敗戦により、元のフランス主張の植民地拡大の国境になった。

こうした歴史的経緯とさらに元凶の二国間の不安定要因もあり、タイのタクシン派政権はカンボジアに対し融和的であったが、今回の武力衝突に見られるようにことカンボジアに対しては政党対立を超えて強硬となっている。また対立がくすぶっているのは、タイ側の要望がカンボジア政権の高官の関与が疑われる国際犯罪組織について具体的に言及しており、タイの要求はカンボジアにとって最も痛いところを突いている。

掲載写真:カンボジア閣僚理事会

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