地元メディア・Khmer Timesが2月19日付けで「カンダール州裁判所は昨日、カンダル州の村人の土地の約1ヘクタールを盗み、土地証書を偽造し、2019年に土地ブローカーに売却したとして起訴された12人の男性を起訴した。」と報じた。
この事件、地元メディアkhmernoteがfacebookに動画をアップしたことで、カンボジア人の間では知られている。事実、カンボジアでは泥棒と麻薬がらみと並んで土地の収奪の件は各地で起こっている。
クサッチ Ksach Kandal地区警察・副長官BunYong 中佐は18日、khmer Timesに12人の被告人はPrek TakovコミューンのPrek Lvea村の村人であると語った。
同中佐は、「所有していない他人の不動産の盗難と売却、公務の遂行への違法な干渉、意図的な暴力行為」の3つの罪で起訴され、最高2年の懲役に処せられる可能性がある、と述べている。12人は16日に逮捕されたと述べた。さらに同氏によれば、「2018年に12人の男性が村人の土地証書を偽造し、その後2019年末に土地ブローカーに売却した」と述べている。
被害者は、自分の土地が売却されたことに気付いた後、地区当局に訴え、裁判所に介入を求め、土地が被告人12人のものではないことを発見した後、買い手は彼らに預金の返済を要求し、彼らはお金を返した。そして2020年、上記の土地が売却または譲渡されないようにするために、裁判所は土地の保護ため差し止め命令を出した。さらに2月初旬に、被告人は当局の許可なしに係争中の土地の周りに壁を建設したというのが同氏が述べたところである。
さて事件は、16日の午前10時30分頃、警察と地区当局が壁を取り壊そうとしたところ起こった。被告人の12人は当局に抗議し始め、「私たちの地区当局が紛争地に建てた壁を動かそうとしたとき、彼らは地面にガソリンを注ぎ、車のタイヤを燃やし、当局と警察を攻撃して抗議し始め、2人の警官が被害を受け怪我したため、警察は取り締まり、すぐに彼らを逮捕した」といのが同副所長の経緯を説明である。
事情聴取が一転、起訴
この事件、上記の報道はあくまで警察側の情報である。別の地元メディアの報道では少し様子が違う。Phnom Penh Postは、「村人たちは係争中の土地の柵を越えて警察と衝突する」という見出しをつけて18日付けで報じている。その時、警察の12人の連行は事情聴取と報じていたが、19日付けでは逮捕、裁判所送りとなった、とKhmer Timesは報じた。
このように各地で起きている土地争奪事件は相反する利害衝突が同じ村人同士でも言い分が違う場合が多い。それは、依然として土地所有権が明確でなかったり、実際に何年も耕作している村人の知らぬ間に他の者に土地所有証書が発行されたりといったことがあるからである。
事実、ここに来て法治の形骸化に危機感を覚えた内務省は大臣自らが先頭になって警察改革、綱紀粛清に乗り出している。
メディアの実態 記事の精査
在カンボジアの日本人読者なら常識であるが、Khmer Timesの英語版での政府、行政関係の記事の多くは、政府の広報記事といった内容なものが多い。同じく地元メディアのPhnom Penh Post 英語版の記事に同じ内容の記事が掲載されておらず、数日遅れで記事が出るといったことがある。一方、紙媒体の中止を決めた大衆紙ラスメイカンプチアはネットの時代で経営難に陥った。クメール語のWebメディアはいくつかあるが、その内容は所謂三面記事の類である。
カンボジアは、先の選挙以来、一党が全議席を占める国である。そこでこの国のメディアがどんな状況にあるかは自ずと理解できる。地元メディアの英語版記事の真偽や裏取りを中国発情報から期待しても無駄である。今や香港発も同様である。事実を散りばめても真実にはならない、場合が多い。そのためタイ発の記事に頼ることになる。これはタイ・メディアということではない。タイ発の外国メディアというほうが自由(検閲がない)がある。要は出所が問題である。無批判引用は危ういといった自覚が必要である。
カンボジアの例、先の選挙以前、帰国した野党党首がプノンペン入りした時、上記の2誌は1面で群衆に囲まれる野党党首の車の写真を大きく掲げ、見出しには「数千人(中には千人単位の数字)が集まる」と付けていた。筆者は地元メディアの上記2紙もこの時はぎりぎりのところで抵抗しているんだ、と思った次第である。なぜなら誰が見ても写真に写る人々の数は数千なんていうものじゃない。十万以上である。はるか彼方まで人々で埋まっている。その後、選挙前に野党は反逆罪で解党に追い込まれた。
*最上画像:当局は違法な壁を破壊し、12人はタイヤを燃やして抗議した。 Khmer Times 掲載