レアム海軍基地の桟橋が完了に 人民解放軍の兵站のため?
レアム海軍基地の桟橋 プレアシハヌーク州

7月29日、中国の国営メディア「環境時報」(所謂:人民日報の海外版・国策宣伝メディア)のカンボジアに関する記事を2つの記事をKhmer Timesは、そのままのコピペで掲載した。

*< >内はKhmer Tiimes掲載(中国メディアのコピペ記事)の記述(邦訳)です。下の記事をご参照ください。

Cambodia is not obligated to ‘allay US suspicions’

 

環境時報によれば、<カンボジア当局は最近、中国が支援したレアム海軍基地の改修プロジェクトが完了に近づいていることを明らかにした。このプロジェクトは昨年6月8日に正式に開始され、米国によって注意深く監視され、積極的に破壊の標的となってきた。建設の急ピッチは「インフラ」支援を得意として知られる中国の効率性を反映しており、米国の不安を高めている。>

<最近の米国メディアの報道によると、衛星画像により、空母を停泊できる主要な桟橋がその場所に建設されていることが示された。これは、米当局者らに、同基地が中国人民解放軍(PLA)海軍による独占的な使用を目的としているのかどうか疑問を抱かせる最新の「証拠」となった。カンボジアの総選挙と時を同じくして、これは米国世論によるカンボジアと中国との関係に対する新たな中傷と攻撃を引き起こした。>と、あたかも中国・国営メディアがカンボジアに成り代わって米国の懸念に反論するという主張であり、カンボジア政府がこの度改めて見解を米国に表明した訳ではない。

「環境時報」といえば、カンボジア国内にコロナ感染が徐々に広がっていた時期(2020年2月)、ソッカホテルを脱走した中国人コロナ感染者でカンボジア当局が厳しいコロナ対策で追跡調査している最中、「ドバイからプライベートジェットでカンボジアに来た中国人たちで、脱走の背後に西側の情報筋がいる」といった、証拠も示さず荒唐無稽な陰謀論を主張し、失笑をかった記憶のあるメディアである。

<カンボジア当局はこれらの噂に繰り返し反論し、このプロジェクトはカンボジアの防衛能力、特にカンボジア海軍の戦闘能力を強化し、地域の平和、安定、繁栄に貢献することを目的としていると述べた。実際のところ、米国にはこの問題に干渉する資格はなく、ましてや反対する権利はない。しかし、米国のメディアでは、「米国当局者の疑念」を口実にして、カンボジアに公然と説明を求めている。一部のメディアはいわゆる「政治アナリスト」の発言を引用し、カンボジア政府に「透明性を確保」し、「米国の疑惑を和らげる」よう求めた。これ以上に米国のいじめの性質を浮き彫りにするものがあるだろうか?>と述べ、フン・セン首相は「レアム海軍基地は泥棒や強盗が来る場所ではない。訪問を許可したのは調査や視察ではありません。」さらに米国には捜索令状もないので、実質的にはカンボジアをいじめていることになる。カンボジア憲法によれば、カンボジアはその領土内に外国の軍事基地を置くことを許可してはならないとされており、これは完全にカンボジア自身の問題である。>とフンセン首相の言葉まで引用してムキになって主張している。

ここまで居丈高な論調は、カンボジアが自国の主権に絡んで主張するならある意味で理解できるが、いったい中国は何でカンボジアを引き合いに過剰に主張するのか、かえって逆効果になる心配さえ出て来る。Khmer Timesがこうした環境時報の記事をコピペするのはいったいどこに対する忖度なのか、と疑ってしまう。

そして、上記の記事の次に同日(29日)付で下の記事を並列に掲載した。

Observers suggest Chinese-built pier for PLA logistics, not for housing  aircraft carrier

邦訳すれば、「空母は寄港できないが、人民解放軍の兵站を支える桟橋を示唆」という題名の記事である。この記事、Khmer Timesはその出所さえ明らかにしていないが、明らかに中国国内のメディアのコピペである。

米国が懸念を示す中国支援のレアム海軍基地の桟橋 プレアシハヌーク州

先ず<中国のカンボジア海軍基地計画は米国を警戒させているが、空母の寄港に対する懸念には根拠がない、とアナリストらは言う。リアム海軍基地はかつてカンボジアとアメリカ海軍の共同訓練の場でした。その際、米国からの反対はなかった。それが今、カンボジアが中国と協力しているので、にわかに大きな問題になっています。実際、米国はカンボジアに「透明性」を要求する立場になく、カンボジアには「米国の疑惑を和らげる」義務はない。>

<米国当局者は常に、このプロジェクトの意図、性質、範囲は不透明であると主張しており、これが米国がカンボジアに圧力をかける主な言い訳となっている。しかし、この議論には根拠がありません。私たちは聞きたいのですが、台湾海峡と南シナ海の近くに4つの軍事基地を追加する米軍の意図は何ですか?韓国に配備されている「THAAD」システムとはどのようなものなのでしょうか?米国は沖縄に新たな海兵隊沿岸連隊の創設を計画しており、誰をターゲットにするつもりなのでしょうか?なぜ米国は中国の通常の海外協力に対してこれほど不安を抱くのか? 透明性について語るのであれば、米国は関係国が完全に安心するまでこれらの疑問を明らかにすべきではないだろうか。中国のカンボジア海軍基地計画は米国を警戒させているが、空母の寄港に対する懸念には根拠がない、とアナリストらは言う。>といった記事内容が続くが、先ずアナリストとは、何者か?同記事の最後に「中国海軍・軍事科学技術シンクタンクの周晨明研究員」の名と発言が出て来る。

同記事の内容は「空母は寄港できないが、人民解放軍・海軍の兵站機能はある」ということを、カンボジア政府がそこまで踏み込んだ発言をしていない段階で、敢えてKhmer Timesが米国の懸念を裏書きするような記事をそのまま掲載するのは何か意図があるのか、と疑問をもってしまう。いずれにせよ、Khmer Tiimesの中国メディアの全面コピペ記事は奇異な印象を免れない。

掲載写真:Khmer Tiimesが転載

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